5
俺は彼女の残した合い鍵とストラップを握り締めて泣いていた。
このイルカ―
あいつと水族館に行った時に買ったんだよな・・・。
―ねぇ、このイルカ可愛いよ。
―ホントだ。
―お揃いで買おう。
―俺は水色。おまえは?
―私、黄色!!
―え〜、イルカは青とかじゃないの?
―黄色だと和也を思い出すから、これっ!
―え〜女の子だからピンクは?
―いいのっ黄色がいいっ!
―ふふっ色違いだね。
―うん。
その時俺のポケットにある携帯が鳴った。
彼女からのメールを知らせる着信音―
急いで携帯を開いた。
―和也ごめんね。
黙って荷物持って行って。
私ね、考えてた。
私と和也じゃ釣り合わない。
結婚もないでしょ?永遠はないんだよね?
和也の顔見たら泣いちゃうから、黙って行ったの。私はいつでも和也をテレビで見れるから寂しくないよ。
和也?私ちゃんとあなたを愛してたよ。
じゃあ、どうして・・・?俺を愛してたならどうして・・・?
永遠なんてないって言ったのは俺の方だった。
でも、俺にはこれが最後の恋だって勝手に思ってた。
ずっと一緒だって思ってたんだよ。
なんだよっ・・・勝手にいなくなって。
こんなに俺を夢中にさせておいて。
どうしてなんだよ。。
俺は握り締めていた携帯を眺めた。
気が付いたら彼女の携帯にかけていた。
出なかった。
合い鍵を握ったまま部屋を出た。
マンションの外に出ていつも彼女と行く公園に来ていた。
ブランコに座り込んでいる見覚えのある姿。
俺は駆け寄った。
「なにしてんのっ?」
顔をグシャグシャにして泣いている彼女だった。
「やだ・・・ごめんなさい。もう行くから。」
「待ってよっ!」
俺は彼女の腕を掴むと自分の方に引き寄せた。
「なんで勝手に出てくんだよっ」
「だって・・・」
「俺はな、おまえじゃなきゃダメなんだよっ」
「こんな年上の可愛くない女。どこがいいの・・・?」
「理由言わなきゃダメなの?」
「和也にはもっと可愛い人がお似合い。私は3つも年上だよっ!周りは結婚したり・・・和也はアイドルで・・・」
「そんな事聞いてない!!」
「とにかく私じゃダメだよ。」
「ダメじゃないっ!
おまえは酔っ払うと絡んで来る、バリバリ働くカッコイイ女の子で、食べる時はすごい幸せそうな顔する、甘えた時の顔、ちょっと気の強い所、他にももっと、もっと、俺はそんなおまえが大好きなんだよっ!」
「和也・・・でも・・・」
「でもじゃないでしょ?俺はおまえと結婚しないなんていつ言った?おまえを嫌いって言った?」
「和也、ダメだよっ」
「なんで?」
「和也はアイドルとして頑張って、私は遠くから見てる。。」
「違うっ!そばにいてよっ!俺がダメなんだよ。おまえじゃなきゃダメなんだよ。」
俺は泣いていた。
続く