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彼女も泣いていた。
「和也…ごめんね。」
「やだ・・・」
俺は彼女を抱きしめた。
ギュッと抱きしめた。
彼女がどこにも行かないように。
「痛いよ。。苦しい・・・」
彼女がそう言っても俺は離したくなくてずっと抱きしめていた。
「どうして・・・好きなのに離れるの・・・?」
「私が辛いから。もう辛いんだ。。限界・・・」
「辛い・・・?」
彼女は俺から体を離した。
「彼氏が和也だって大きい声で言いたい、でも言えない・・・」
「親に早く結婚しろって言われる。和也とはそう言う未来はないでしょ?テレビに映る和也はいつもアイドル。可愛いタレントさんや女優さんとお喋りしたり・・・
もう限界だよ。。
私が和也の知らない所で何回泣いたと思う?」
知らなかった。
彼女がこんな思いしてたなんて。
「だから、もうおしまい。私の誕生日が来たら別れようって決めてた。」
「なんで勝手に1人で決めちゃうんだよっ」
「ごめんね、和也は絶対嫌だって言うと思ったから。」
「当たり前でしょ?好きな子を簡単に手放すわけない。」
「ありがとう。」
彼女は少し微笑んでその場から立ち去った。
「追いかけちゃダメだよ。」
そう言い残して。
彼女はあのイルカのストラップと合い鍵だけを残して俺の前から姿を消した。
あれからもう何ヶ月も立つ。
俺は空を見上げる。
同じ空の下。
あいつまた、上司に嫌な事されてないかな・・・?
同じ空の下にいる。
俺の携帯にはイルカが2匹付いている。
空を見上げて思うんだ。
どんなに好きでも別れなきゃいけない時があるんだな・・・って。
俺はあいつを忘れる事はなかった。
見てるかな。
俺の事。テレビで見てくれてるかな。
いつか忘れちゃうのかな。
自分の部屋に戻り、なんとなく本棚に目をやる。
ん・・・?
それは彼女と撮った写真のアルバムだった。
その時1枚の紙がヒラヒラと落ちた。
《和也?私はあなたをすっごい愛してた。だから別れる事に決めた。運命の相手ならいつか…いつかきっとまた出逢うよ。だから、2人がいつか出逢うまで・・・バイバイ・・・》
いつか。
必ず出逢うまで。
俺は待つ事にするよ。
彼女は絶対、運命の相手だから。
俺はベランダに出て空を見上げた。
いつか彼女に出逢える事を信じて・・・
終わり