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「あけみ、今度の土曜日空いてる?」
私が仕事の片付けをしているとともこが聞いてきた。
「何?」
「店長がタケルくんの歓迎会したいって。」
「あー、うん。土曜日なら大丈夫かな。」
「ちょっと急だけどみんなの都合が付くのがこの日なの。」
「そっか。私は大丈夫だよ。」
「良かった。場所が決まったら連絡するね。」
「うん。」
土曜日、予定通りタケルくんの歓迎会が居酒屋の座敷の部屋で行われた。
潤にも今日は職場の新人の子の歓迎会で遅くなると伝えてあった。
何となく気が乗らなかったけれど行ってみると意外と楽しくて時間はあっという間に過ぎた。
その日、タケルくんが私の隣に座ってずっとしゃべっていた気がする。
お酒も入ってみんな上機嫌だった。
「あけみさんは彼氏いるんですか?」
隣のタケルくんが突然聞いていた。
「えっ?いるよ。」
「やっぱり!」とちょっと悲しそうにタケルは下を向いた。
「タケルくんは?彼女は?」
「いないですよ。いるわけないです。あけみさん、彼氏いるんですね。。」
「うん。それよりタケルくん大丈夫?かなり飲んでるけど?」
「大丈夫です。ちょっとトイレ行ってきます。」
タケルが立ち上がってトイレに行こうとすると足元がふらついた。
「タケル、大丈夫か?」ほろ酔いの店長も立ち上がってタケルを支えた。
「だ、だいじょおぶです。」タケルは少しろれつが回らない感じで店長に答えた。
「誰かタケル送ってってやれ。」
店長が心配してタケルを支えながらみんなを見た。
するとタケルが「だいじょおぶですよ。ひとりでもかえれますから。」
「でも、足元フラフラしてるじゃないか。」
「いいんです。」
そう言いながらタケルはその場にヘタっと座った。
「おい、大丈夫か?」
店長がタケルの横にしゃがんで顔を覗き込んだ。
他の社員も心配そうにタケルの背中をさすった。
「タケル、お酒弱かったのか。大丈夫か?」
タケルより少し上のバイトの子がタケルを心配そうに見た。
「いや・・・。」
するとタケルが泣き出した。
「えっ?どうした?」
「いや、まさか。。あけみさんに彼氏がいるなんて。。いるとは思ってましたけど。でも。。」
「タケル、まさかあけみさんを?」
タケルを心配したバイトの子がびっくりしてあけみを見た。
「えっ、私?」
まさか私のせいで泣いてる?
タケルが私の方を見て言った。
「そうです。あけみさんですよ。俺はあけみさんが好きなんです!!」
「えっ?!」
みんなが一斉に私を見た。
タケルは半分泣きながら私の前に来て正座した。
「好きです!」
「ちょ、タケルくん?」
「彼氏がいてもいいです!」
「はっ?」
「あけみさん!」
「ちょっとタケルくん。私は困るよ。」
どうしていいか分からずその場でオロオロしていると、タケルはそのまま畳の上に突っ伏して寝てしまった。
店長が慌ててタケルを抱き起こしてもう一人のバイトの子と一緒に「送ってくる」と言って店を出て行った。
「え?えぇー!」
私はびっくりしてなんだか分からずその場で動けずにいた。
その時ともこが私の隣に来て「やっぱりねー。」と納得したように頷いていた。
「何?ともこ。知ってたの?」
「だって、タケルくん自分からあけみと一緒に仕事したいって言ったんだってよ。店長に。」
「そうなの?!」
だからタケルくんと一緒になることが多かったのか。
「でも、店長がいいって言ったの?」
「なんか仕事が出来る人と一緒に仕事したいです。あけみさんはしっかりしてそうだし、って店長に言ったらしいよ。」
「でもそれだけで?」
「店長もあの笑顔に負けたんだよ(笑)」
「まぁ、確かに。あの爽やかな笑顔で言われたらね(笑)」
「そんなカッコよくて爽やか男子に告白されて羨ましいぞ(笑)」
「ちょっと!ともこ。私には潤がいるんだよ!」
「あー。ごめん。潤くんには内緒にしとくから。」
その日はお酒に酔ったせいかタケルくんに告白されたせいかいつもよりドキドキしていた。