15
あかりは、潤の前からも翔の前からも姿を消す事を決めた。
潤の部屋から荷物を持ち出し合鍵を返してから、もう1週間になるだろうか…。
あれから二人には連絡していない。
もう二度と会わないと決めていた。
「あかり~、ご飯だよー。」
「はーい。」
あかりは、二階から下へと降りた。
キッチンの食卓に座ると、いただきます、と食べ始めた。
「あかり、いつまでいるの?」
「ん~、分かんないっ」
そう、あかりは実家に帰っていた。
「会社は?何かあったの?」
問いかける母に対して、何も答えなかった。
「ちょっとあかり?!」
「もう、うるさいっ!」
あかりは、箸をバシャッと置いた。
「ちょっと、あかりっ!!」
「今は話したくないのっ!」
あかりは、また二階へと上がって行った。
あかりは、部屋に戻るとベッドに横になって、携帯を見た。
着信履歴を見ると、翔から電話が何件か入っていた。
あかりは、その画面を閉じると電話帳を開いた。
電話帳を辿っていき、あかりはどこかへ電話をした。
ーもしもし、ゆいこ?
ーあかり?久しぶり
ー今こっちに帰って来てるの。会わない?
ー今から?
ーダメ?
ーん~、久しぶりだし、いいよ。
あかりは、ゆいことファミレスで待ち合わせた。
あかりは、待ち合わせのファミレスに入り、ゆいこを見つけると急いで席まで行った。
「ゆいこー」
「久しぶりだね、元気だった?」
ゆいことは小学校から高校まで一緒だった親友だ。
ゆいことあかりは、それぞれ飲み物を頼むと改めて会話を始めた。
「で?元気だったの?」
「それがね、私ダメだよ…ゆいこ助けて…」
「会った早々なに?どした?」
ゆいこはあかりの顔を覗き込んだ。
「ちょっと、いろいろあって。聞いてくれる?」
あかりは、今までの事をゆいこにすべて話した。
「そっか…辛かったね。」
ゆいこは向かいに座っているあかりの顔を見た。
「どうしたらいい?」
「そんなの答えは出てるじゃん?」
「えっ?」
「もうさ、あかりの言葉の端、端に翔くんが好きだって言ってるように聞こえるよ。」
あかりは、ゆいこを見つめて何も言わなかった。
「ねぇ、潤くんはさ、あかりに自分の気持ちに素直になれって身を引いたんでしょ?」
「うん…だけどね、翔は潤の友達だよ?」
「だからだよ。あかり。」
「だからって?」
「もう、あかりは分かってない。」
ゆいこは頼んでいたアイスティーが届くと一口飲んだ。
「ゆいこ?」
「だからね、潤くんの優しさをムダにしちゃダメだって事。このまま二人の前から姿を消しても何の解決にもならないよ、あかり?いっといで。翔くんのところに。」
「でも…」
「でも、じゃないでしょ?」
「いいのかな?翔のところへ行っても?」
「潤くんは、きっと友達の翔くんだからこそ、あかりとくっついて欲しいって思ったんだよ。」
「……」
「友達だからこそなのっ。信頼してるからあかりを託してもいい、あかりを幸せにしてくれるって思ったんじゃないかな。」
「そうなの…かな?」
「潤くんの決意を踏みにじっちゃダメだよ!!」
「…ゆいこ、私間違ってたのかな?」
「うん。あかりは間違ってる。潤くんだって簡単に決めた事じゃないと思うよ。男の決意だよ。」
「でも…」
「でも、じゃないのっ、とにかく、すぐに帰りな。今からなら夜行バス間に合うよ。」
「今から?」
「こう言うのは早い方がいいのっ。」
あかりは、ゆいこに別れを告げると急いで実家に行き荷物をまとめた。
「お母さん、いきなり来ていきなり帰ってごめんね。」
「いいよ。ゆいこちゃんに会って問題解決したんでしょ?」
あかりは、何かあった時はいつもゆいこに相談していた。
それも、母親はわかっていた。
「うん、なんとか気持ちの整理もついた。」
あかりは、再び夜行バスに乗って東京へと向かった。
続く