16
俺はあかりに会いたかった。
今頃、何してるんだろうか…?
電話をしても出ない。
潤くんの前から姿を消して一体どこへ行ったんだろう。
大学からの付き合いだ。
あかりが行きそうな場所は何となく分かっていた。
きっと、実家に帰ったんだろう。
ゆいこちゃんの話もたまに聞いていた。何かあれば相談するって。会いに帰ったかな。
いいや、違ってもいい。
行動に起こさないと始まらない。
俺は、今からあかりの実家に行く事にした。
夜行バスなら今から乗れる。
俺は、後先も考えずにバスに乗っていた。
ただ、あかりに会いたい。
それだけで。
バスの揺れで俺は眠っていた。
まどろみの中で夢を見ていた。
『翔?』
『何?』
『何でもない…。』
あかりが俺を見て微笑んでいた。
俺はあかりの手を握る。
その手は温かかった。
バスの揺れで俺は目が覚めた。
ふと横を見ると、バスの窓ガラスに映る自分がいた。
なんて顔してるんだ、俺。
酷い顔だ。
最近、眠れていない。
あかりの温かい手の温もりは夢とは思えないほど、リアルに感じた。
勢いでバスに乗ってしまったけれど、本当に良かったんだろうか?
自分のしている事がバカみたいにも思えてきた。
俺はまた、まどろみの中に入っていった。
あかり。
会いたい。
続く