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潤は、自分の部屋に戻ると、ベットに横になった。
寒くて体が冷えたせいなのか、布団に入っても体が暖まらなかった。
寒いな…
そんな事を思いながら更に布団に潜り込んだ。
潤は考えていた。
あいつは、本当に翔くんとは何もないのかな。
大学からの仲間って言ったって…
男と女だ。
同じベットに寝ていたっておかしくない。
潤は暖まらない体を丸めて震えていた。
寒い…
熱かな?
何となく意識が朦朧としてくる中で夢を見ていた。
『潤?』
『何?』
『私、帰るね。』
『うん。どこへ?』
『翔くんの所。』
『なんで?』
『だって、私と翔くんは付き合ってるんだし、当たり前でしょ?』
『えっ?ちょっと待って…』
『じゃあね、潤くん。』
『待って。』
『何?私、早く帰りたいんだけど。』
『待ってっ!』
じ…くん…
じゅ…ん…?
遠くで呼ぶ声がしたような気がして、ゆっくり目を開けた。
「潤?」
目の前にはあかりいた。
「来てたの?」
「電話…何度もしたんだよ?」
「えっ?今何時?」
「もう夜だよ。それに」
あかりは体温計を潤に見せた。
「えっ?熱?」
「うなされてたよ。すごい熱だし、お粥作ったからね。」
「なぁ?」
「ん?何?」潤の顔を覗き込んだあかりを潤は自分の方に抱き寄せた。
「どこにも行かないで。」
「潤…」
二人は唇を重ねた。
「行かないよ、どこにも。」
あかりは唇を離すとそう言って微笑んだ。
潤は安心したのか、静かに眠りについた。
あかりは寝室を出ると、ソファーに深く座り、鞄から鍵を出した。
翔のマンションの合鍵だ。
あかりはしばらくそれを見つめていたが、また鞄にしまった。
深く溜め息をつくとソファーに横になった。
どのくらいの時間が過ぎただろうか?
キッチンから物音が聞こえて彼女は目が覚めた。
「潤くん?」
「あっ、ごめん。起こしちゃった?」
「どうしたの?」
「お腹空いちゃって。」
あかりはお粥を温め直して潤に出した。
「潤、熱は?」
「まだちょっとあるかな…。」
「食べたら寝ないとね。」
「そうだな。」
潤は何か言いたそうにあかりを見つめた。
「ん?なぁに?」
「夢、見てさ・・」
「夢?」
「お前が、翔さんの彼女なの。行っちゃうんだ。帰るね、って・・」
「・・・」
あかりは何も言わずに潤を見つめていた。
「合鍵…」
「うん、分かってる…」
「じゃあ・・」
「でも、、」あかりは潤から視線を反らした。
「なんでだよっ!」
「そのうち返すから。」
「そのうちっていつだよっっ!!」
潤が大きな声を出したせいであかりは、驚いてビクッとなった。
「ごめん。」
「ちゃんと返すから。大丈夫だから。」
潤はイライラしていた。
自分がこんなにも好きなのに、彼女に想いがうまく伝わっていないようで悲しかった。
「今すぐ返して来いよ!」
「でも…。」
「いいからっ!」
「潤、もう寝なきゃ。」
あかりは潤を寝室へ行くように手を取って立たせようとした。
「触んなよっ。」
潤は更にイライラしていた。自分が彼女を離したくないと思えば思うほど、辛くなって悲しくなって彼女に当たってしまう。
「潤、ごめん…」
「…ごめん、なんか不安で…どうかしてるよな。」
「帰るね。」
「ごめん、もう翔さんのところへは行かないで…。」
あかりは、泣きそうになる自分を押さえながら、潤に笑顔を見せた。
「大丈夫…だから。」
あかりは、静かに玄関から出て行った。
続く