シンガーソングライターでギタリストのRei と、ギタリストの渡辺香津美がコラボレーションした曲
"CACTUS"を聴いている。
優しいリズム、贅沢な音。
きらきらしていて、暖かくて、贅沢な空間が広がって、優しく迎え入れてくれる音の空間。
もっと、ずっと、いつまでも、この空間に身を預けていたくなる、そんな空間。
私が大好きな場所は、こんな空間だったんだ。
私の大好きなレストランが、もうすぐ、休業する。
休業期間は、とりあえず年内。
年明けの再開を目指す。
世界一ダンディなソムリエであり、オーナーシェフのマスターと、マスターを敬愛するパートナーの、ふたりのお店。
喧騒から離れたところにある、そのお店の扉を開くと、
琥珀色が素敵な一枚板のカウンター、磨きあげられたたくさんのワイングラス、天井まで続くワインセラー
清潔が行き届いたフロア、ふたりしてワインを選ぶときの囁き声
ふたりが大切にしてきた、美味しいワインと料理を気軽に、いつでも立ち寄れる、そんな空間
都内で開いていたカウンターキッチンのお店の時と同じように、鎌倉に移転してオープンしたこのお店でも、素敵なふたりの顔が見られて、美味しい料理と素晴らしいワインを味わえる、居心地の良い居場所。
ワインは、お店を訪れるたびに、いろんな国の、香りに、色味に、こんな味わいがあるのだと、いつだって新鮮な驚きをくれた。
これから寒くなっていく鎌倉は、どんなだろうね。
初めて迎える冬の鎌倉だね。
季節が変わっていって、風景が変わっていく、お店に来るのが楽しみだよ。
食事の最初の一杯に、久しぶりにシャンパーニュをお願いして、マスターに、無邪気にそんな話をしたら、
入院することになったので、来週からしばらく休業することにしたんです。
これからが楽しみと言ってくれたから、帰り際じゃなくて、今、言ったほうがいいと思って。
いつもと変わらない口調で、だけどきっぱりと。
マスターは闘病生活に入る。
病気はいつだって、突然やってくる。
我が身を通して知っているつもりだけれど、あんまりだ。
これが、現実なのだ。
どうなるのか、分からない。
私は信じる。
年明けに、再開の報を聞くことを。
いつも立ち寄る鎌倉のお寺のお賽銭箱の前で、次にここで手を合わせる時は、全てが叶いましたと氏神様に報告するのだと、心に決めて。