Googleトレンドで『観る雀』を読み解く
ここ最近、Mリーグの記事などを中心に『観る雀』という言葉が使われるようになりました。
これは将棋の『観る将(自分では将棋を指さずに、プロ棋士などの対局の観戦を楽しむ将棋ファン)』の麻雀版という認識で間違いないかと思います。
ただ、僕個人の認識としては『観る雀という言葉は使われているが、それがブームになっていることを示すデータがまだ存在しない(あるかもしれないが公開されていない)』というのが非常に気がかりでした。
一応、『麻雀の参加人口(リアル麻雀orネット麻雀を1年間に1回以上プレイした人)』のデータは存在しますが、これでは観る雀の動向を掴むことが出来ません。
麻雀ウォッチ『「レジャー白書2022」麻雀人口450万人で前年比50万人増 「観る雀」から入った層の増加が要因か』より
また、↑の記事に「参加人口の増加は観る雀が要因か」とありますが、これは2020年3月からのコロナ禍による急激な落ち込みの反動であるとも考えられます。
Googleトレンド
Googleが2006年から提供をしているGoogleトレンドというサービスがあり、これは『人々が何を検索しているか?(≒何に興味を持っているか?)』というトレンドを調べることができます。
Googleトレンドでは、主に以下の情報を得ることができます。
・特定のキーワードの過去~現在の人気度(検索回数)の推移
・そのキーワードを検索しているユーザーが他にどんなキーワードで検索しているか
・検索回数が急上昇している人気のあるトピック
『Googleトレンドの使い方!検索数の調べ方や数値の見方を解説』より
・人口的に圧倒的多数である麻雀をプレイしない人の動向まで含めた社会的なトレンドを調べることができる。
・インターネットやスマホの普及率の推移を考えれば、現在に近いほどトレンドの信頼性は高くなる。
・あくまで傾向の比較なので具体的な数字はわからない。(比率しかわからない)
例えば、『囲碁』『将棋』『麻雀』、日本、2004年~現在のトレンド(2016年12月の藤井聡太デビュー、2017年7月のMリーグ発足を加筆)を見ると、意外なことに麻雀の方が平均では将棋を上回っています。
それではこのGoogleトレンドを使って色々と調べて行きたいと思います。
観る雀の実像とは?
そもそも、『観る雀』やその語源である『観る将』というのは、『元々そのゲームにあった観戦文化(プレイより観戦が中心の人)』と『特定のブーム(をきっかけに観戦を始めた人)』の2つを合わせたものであると考えられます。
将棋の場合、前者が元々盛んだったのは周知の事実ですが、近年の藤井フィーバーに連動して後者も増えたというのが『将棋』『藤井聡太』、日本、過去5年間のトレンドからもわかります。
麻雀の場合、前者が元々盛んではなく(参考:『麻雀の観戦人口(前編)』『麻雀の観戦人口(後編)』)、『麻雀』『Mリーグ』、日本、過去5年間のトレンド(第1回緊急事態宣言の期間を加筆、この期間は天鳳の接続人数が2~2.5倍になっていた)を見てみても『麻雀』と『Mリーグ』のトレンドは連動してるようには見えず、(前者が元々少ないなら後者は反応しやすいはずが)後者の反応も鈍いことがわかります。
また、そうなってしまう理由も『麻雀』、日本、過去5年間のトレンドの関連ワード(人気)を見れば一目瞭然で、ランキングの上位はゲーム関連で占められておりMリーグは18位と22位となっています。(過去12か月間のランキングでも同様の傾向)
これは僕の推測なのですが、将棋は『一極集中型』の文化なのでプロ棋戦やスーパースターの動向に関心が集中するのに対して、麻雀は『多極分散型』の文化なので自らプレイ・賭博・漫画・ルール談義など様々な分野に関心が分散するから(トレンドで麻雀が将棋を上回る要因もこれ?)ではないかと思います。
まとめ
現時点での結論としては、『観る雀という人がいることは間違いないが、それをブームと呼ぶにはデータ的に弱い(文化的にまだ根付いてないし、社会的なブームには程遠い)』ということになるかと思います。
もちろん、僕自身に『観る雀』を否定する気持ちはありませんし、それを文化として盛り上げようという動きにも賛成です。(僕には提言を行うくらいしかできませんが)
ただ、「本当にブームになっているのか?」「麻雀界隈での関心がMリーグに集中した結果では?」「Mリーグへの忖度が行き過ぎた結果では?」などの疑問に対して答えを出すきっかけに十分なりましたし、社会的な視点からも麻雀を見る手段を得られたのも非常に有意義であると思います。
おまけ(お正月に何かある?)
『麻雀』、日本、2004年~現在のトレンドを見ていて気付いたのですが、毎年1月頃にトレンドのピークが来る理由がちょっとわかりません。
MリーグやYouTubeなどの影響でもなく、大型連休の影響にしてはGWやお盆ではその傾向が見られないし(『雀荘』などはその傾向がある)、毎年1月の関連ワードを調べても特に変化はありませんでした。
社会的には麻雀をプレイしない人の方が圧倒的多数なのだから、そういう人が1月に多く検索してる(『正月=麻雀』というイメージの影響)という可能性もある?