そしてルカは桃花のマンションまで送ることになった。
マンションに送ってもらったことはある。
でもルカはいつもすぐ玄関の前で帰った。
ただ今日は時間が時間なのだ。
すでに終電がなくなっている。
サークルのメンバーが気を使ったのかどうかは定かではないが、タクシー以外の交通手段はなくなっていた。
そして初めてルカが桃花のマンションを訪れた。
桃花は玄関の鍵を開けながら、
「私の部屋に男の人が来るの初めてなんだ」と言った。
「へえ……」
ルカは変に嬉しそうな顔をした。
「ちょっと待っててね」
そう言って、桃花は一人でマンションの中に消えた。
ガチャ、ガチャと音がする。
しばらくすると、マンションの扉が開いて、中から桃花が顔だけ出した。
そしてルカを手招きした。
ルカが中に入ると、
「おかえり、あなた」と、満面の笑みを浮かべてそう言った。
桃花はピンクのエプロンをしていた。
それは桃花の誕生日にルカがプレゼントしたものだった。
「ただいま」
そう言って、ルカは靴を脱ぎ、中へと入った。
「もうちょっと待ってね、あと少しでできるから」
そう言って、キッチンの鍋をかき混ぜた。
「うーん、最高」
ルカは一人興奮気味に喜んでいた。
これはルカのリクエストだった。
「新妻ごっこをしたいな」と、プレゼントを渡されたのだ。
自称森ガールの達人のルカが言うのだ。
森ガールはきっとこんなことをしているのだろう。
そう思いながら、桃花はルカのリクエストに答えた。
ただ、これはルカの個人的趣味だったようだ。