タイトル「森ガールと盛りあガール」 43 | 可愛い君に愛を囁きたい

「意外と、シンプルな内装だね」

 桃花の部屋は物があまりない。

 部屋の中に入ると殺風景な桃花の部屋を見て、そう言った。

 内装までは森ガールを完成させてなかったのだ。

 しかしいつかこういう日も来るだろうと、最近、部屋にあったヘビメタを思わせるものを全て処分したばかりだった。

 そのせいで、すっかり部屋は空っぽみたいになっていた。

 お金に困ってるわけじゃないが、どこかで部屋の中だけはまだ森ガールに染まりたくないという抵抗感が残っていたのだ。

 しかし今日初めてルカを招き入れて、心は決まっていた。

 完全森ガール宣言。

 外見だけでなく、内面、行動、身の回り全てを森ガール化しようと決心した。

なんか自分が自分でなくなっていく気がしたが、それでも桃花は幸せだった。

相手に合わせることがこんなに楽しいとは思わなかった。

料理を二人で食べ、食べさせあったりしてると、決心は揺らぐことのないものに変わっていた。

なんかイチャついてる自分が、恥ずかしい。

プライドがズタズタにされてる気がする。

でも楽しいからいいやと思って、バカになりきった。

ヘビメタ時代には考えられない風景だ。

ヘビメタにはヘビメタのプライドがあって、そんな軟弱なことできるかって、突き放したに違いない。

でも今の自分は森ガール。

森ガールなんだから、いいじゃん、どんだけ、イチャイチャしたって。

あのままヘビメタを続けてたと思うと、怖くなる。

きっと体のあちこちにピアスをあけて、強引な男に力ずくで押さえ込まれてたに違いない。

こんなに優しく包み込んでくれるような愛され方はきっとしなかっただろう。

片づけを二人で仲良く終えると、ゆったりとした時間が流れ始めた。

ああ、ルカの肩に頭をもたげ、ほろ酔い気分でキスをされると、とろけてしまいそう。

満月の下じゃ、きっと恥ずかしくて仕方なかったかもしれない。

三日月の薄明かりの中、初めてルカに朝まで寄り添った。

その日はキスだけで何もなかった。