ルカはホッとため息をついた。
毒をもって毒を制すか。ヤンキーにはヤンキーだな。
と、桃花はルカの襟首をねじり上げた。
「ラムって誰よ」
ルカの首が絞まり、息苦しかった。
「ああ、モトカノ」
桃花はルカを突き飛ばした。
こっちのほうがヤバイ方のヤンキーかもしれない。
「モトカノって言っても、無理やり付き合ってたようなもんだから」
「ラムって、可愛い名前じゃん」
「ラムって言ったって、来る夢って書いて、らいむって言うんだけどね」
来夢が本名か。
モトカノって言っても、油断できない。
可愛い子だったら、元鞘だってあるし。
「写真見せて」
桃花はルカの携帯を取り上げた。
そして、写真のファイルを見た。
女の影がまるでない。
「ラムの写真なんかないよ」
「本当?削除しただけでしょ」
「疑う必要ないよ、モロヤンキーだから」
「ヤンキー」
「ああ、桃花より何倍もヤンキーだよ」
「私はヤンキーじゃないからね」
「ラムって、来る夢って書くんだぜ。ヤンキー丸出しだろ、名前から」
なんだろう、ルカの周りって、ヤンキーばかりだ。
ヤンキーに好かれる体質なのか。
「背中に鬼の刺繍の特攻服着てたから、ラムちゃんみたいだろって、自分でラムって言い出したんだ」
「ふうーん」
ラムちゃんって、「うる星やつら」のことか。
夏休みになると、映画をよくテレビでやってたっけ。
「じゃあ、可愛くないんだ」
「ちっとも」
「でもモトカノでしょ」
「しつこい」
珍しくルカがムクれた。
それから何を話しかけても黙り込んでしまった。
そして気まずいまま、別れてしまった。
せっかくの楽しいデートが台無しになった。
大体どうして女の私がいつも男のあんたを家まで送ってるのよ。
逆でしょ、普通。
まあ、その後期待しちゃうから、別に文句を言ってるわけじゃないんだけどさ。
こうやって一人でマンションに帰ってると、ルカの男らしさに疑問を感じずにいられない。
守ってるのはどっちだ。