タイトル「森ガールと盛りあガール」 130 | 可愛い君に愛を囁きたい

ルカはホッとため息をついた。

毒をもって毒を制すか。ヤンキーにはヤンキーだな。

 と、桃花はルカの襟首をねじり上げた。

「ラムって誰よ」

 ルカの首が絞まり、息苦しかった。

「ああ、モトカノ」

 桃花はルカを突き飛ばした。

 こっちのほうがヤバイ方のヤンキーかもしれない。

「モトカノって言っても、無理やり付き合ってたようなもんだから」

「ラムって、可愛い名前じゃん」

「ラムって言ったって、来る夢って書いて、らいむって言うんだけどね」

 来夢が本名か。

 モトカノって言っても、油断できない。

 可愛い子だったら、元鞘だってあるし。

「写真見せて」

 桃花はルカの携帯を取り上げた。

 そして、写真のファイルを見た。

 女の影がまるでない。

「ラムの写真なんかないよ」

「本当?削除しただけでしょ」

「疑う必要ないよ、モロヤンキーだから」

「ヤンキー」

「ああ、桃花より何倍もヤンキーだよ」

「私はヤンキーじゃないからね」

「ラムって、来る夢って書くんだぜ。ヤンキー丸出しだろ、名前から」

 なんだろう、ルカの周りって、ヤンキーばかりだ。

 ヤンキーに好かれる体質なのか。

「背中に鬼の刺繍の特攻服着てたから、ラムちゃんみたいだろって、自分でラムって言い出したんだ」

「ふうーん」

 ラムちゃんって、「うる星やつら」のことか。

 夏休みになると、映画をよくテレビでやってたっけ。

「じゃあ、可愛くないんだ」

「ちっとも」

「でもモトカノでしょ」

「しつこい」

 珍しくルカがムクれた。

 それから何を話しかけても黙り込んでしまった。

 そして気まずいまま、別れてしまった。

 せっかくの楽しいデートが台無しになった。

 大体どうして女の私がいつも男のあんたを家まで送ってるのよ。

 逆でしょ、普通。

 まあ、その後期待しちゃうから、別に文句を言ってるわけじゃないんだけどさ。

 こうやって一人でマンションに帰ってると、ルカの男らしさに疑問を感じずにいられない。

 守ってるのはどっちだ。