「で、何しにきたんだよ」
大樹は突然、葉月に突き放すように言った。
葉月はじっと黙り込み、唇をかみ締めた。
そして決心したかのように口を開いた。
「ねえ、大樹、私、産むからね」
よっぽどその言葉がショックだったのか、大樹は固まってしまった。
そして、急に顔を真っ赤にして、
「はあ?」と、大樹はぶちきれたような声を出した。
「金、渡しただろ」
「金なんかいらない。私がほしいのは大樹だよ」
葉月は泣きそうな目で大樹を見つめてる。
はあ?と言いたいのはこっちのほうだ。
別れたって言うから、きれいに別れてるかと思ったら、ガキまでできてるじゃないの。
「バカ、待てよ、これからなんだぜ、俺、やっとデビューしたのに」
何やってんのよ、このバカ。
それで私にちょっかい出そうとしたわけ。
桃花はそんな二人を見ながら、ついにぶち切れた。
「ちょっと!大樹、責任とりなよ、あんた」
桃花は思わず声を上げた。
「なんでお前が口はさむんだよ」
「あんた、男でしょ。何逃げてんのよ」
「お前には関係ないだろ」
「大体、これからって時に、ガキなんか足かせにしかならないだろ」
「あんた、本気で言ってんの」
桃花は大樹の胸ぐらをつかんだ。
「こんなブスと結婚する気なんかないんだって」
桃花は大樹を突き飛ばした。
ブスって、そんなブスをライバル視してた私はどうなるのよ。
「東京には見た事もないような綺麗な女の子がいっぱいいるんだぜ、芸能人だって、モデルだって、これから会っていろいろあるかもしれないだろ」
なんだ、こいつ、下心しかないのか。
「子供なんかいたら、モテなくなるだろ、まして結婚なんか!」
なんちゅう、身勝手。
こいつはこんなやつだった。
そうだ、こいつは昔、女に持てるペンダントとか通販で買うような男だった。