タイトル「森ガールと盛りあガール」 89 | 可愛い君に愛を囁きたい

「で、何しにきたんだよ」

大樹は突然、葉月に突き放すように言った。

 葉月はじっと黙り込み、唇をかみ締めた。

 そして決心したかのように口を開いた。

「ねえ、大樹、私、産むからね」

よっぽどその言葉がショックだったのか、大樹は固まってしまった。

そして、急に顔を真っ赤にして、

「はあ?」と、大樹はぶちきれたような声を出した。

「金、渡しただろ」

「金なんかいらない。私がほしいのは大樹だよ」

葉月は泣きそうな目で大樹を見つめてる。

はあ?と言いたいのはこっちのほうだ。

別れたって言うから、きれいに別れてるかと思ったら、ガキまでできてるじゃないの。

「バカ、待てよ、これからなんだぜ、俺、やっとデビューしたのに」

何やってんのよ、このバカ。

それで私にちょっかい出そうとしたわけ。

桃花はそんな二人を見ながら、ついにぶち切れた。

「ちょっと!大樹、責任とりなよ、あんた」

桃花は思わず声を上げた。

「なんでお前が口はさむんだよ」

「あんた、男でしょ。何逃げてんのよ」

「お前には関係ないだろ」

「大体、これからって時に、ガキなんか足かせにしかならないだろ」

「あんた、本気で言ってんの」

 桃花は大樹の胸ぐらをつかんだ。

「こんなブスと結婚する気なんかないんだって」

 桃花は大樹を突き飛ばした。

 ブスって、そんなブスをライバル視してた私はどうなるのよ。

「東京には見た事もないような綺麗な女の子がいっぱいいるんだぜ、芸能人だって、モデルだって、これから会っていろいろあるかもしれないだろ」

 なんだ、こいつ、下心しかないのか。

「子供なんかいたら、モテなくなるだろ、まして結婚なんか!」

 なんちゅう、身勝手。

 こいつはこんなやつだった。

 そうだ、こいつは昔、女に持てるペンダントとか通販で買うような男だった。