「なんか、見違えたな、別人だな」
どうせ、笑ってるんだ。
「お前って、本当は可愛かったんだな」
えっ?桃花は面食らった。
「似合いすぎだな」
大樹は桃花を頭の先からつま先まで見つめている。
事情がつかめないルカは、呆然と見つめてる。
大樹がルカに気がついて、指をさして、「彼氏?」と聞いた。
そう聞かれて、即答できなかった。
その時の気持ちは、大樹にルカのことを知られたくないと正直思った。
大樹のことがやっぱ、好き。
こうして二人一緒に並んでみて、強く感じる。
私は大樹のほうがルカより好きだ。
そうだ、私が森ガールになったのも、見返してやりたいから。
本心は彼がほしかったわけじゃない。
大樹に妬かせたかったから。
自分の本心にあらためて気がついてショックを隠しきれない。
でも、そうだ。
大樹には彼女がいるんだ。
どうせ、大樹には森ガールがいる。
それに一度フラれた相手だ。
断ち切った想いを今さら燃え上がらせても、またフラれるに決まってる。
「俺、東京に出てきてるんだ」
「知ってる」
大樹は私の気持ちなんか気がついていないだろう。
ただ同郷のしかも元メンバーくらいにしか思ってないに違いない。
「あっ、そう」
「デビューしてるのも知ってる。この前のエフエムの収録だって、見に行ったわ」
気がついてたんじゃないの。
「えっ、あれ来てたんだ」
「うん」
「声かけてくれたら、良かったのに」
と、大樹は携帯がなったらしく、携帯で誰かと話し始めた。
「ごめん、行かなきゃ」
まさか森ガールとデート?
「仕事なんだ、今から」
ホッとしてる自分に桃花はさらに大樹への想いを確認することになった。
「とにかく、今度、メールするよ。アドレス、前と変わってないんだろう」
「うん」
そう言って、大樹は去っていった。
その後姿をじっと見つめてしまった。