愛海があおったせいか、せっかくのラブラブな雰囲気が少し崩れ始めたようだ。
最近ラブラブな話ばかりで少し飽きていた。
MXテレビでうる星やつらを再放送してるから一緒に見てるだとか、DVDで映画を見たとか、昔の漫画で盛り上ってるみたいな話ばかり。
私はドロドロした昼ドラが好きなのよ。
「牡丹と薔薇」みたいにドロドロしたのがね。
「ブス好きっているからね……」
愛海が焚きつけると、桃花は黙り込んだ。
「ちょっと前に堤下ってデブが好きだって、モデルがいたじゃない」
堤下ってあの脇汗が臭そうなブタ顔のコメディアンね。
「それにフジワラの顔のでかいほうよ。あんなのが好きだっていうユッキーナの美的センスってどうなのって思わない?」
確かにブス好きっている。
心配だ、心配だ。心配だー!
「たまにカチンとくること言うのよね」
「なに、なに?」
愛海は身を乗り出して、聞き耳をたてた。
ルカは蘭子が吐き捨てたセリフをたまに口にしては、首をひねるらしい。
それは蘭子が「おめえの女の趣味はほんと、最高だな」と言ったことだ。
「いいじゃない。誉めてられてるんだよ、ルカの美的センスを」
桃花としては悪い気はしない。
自分のことを誉められてるからだ。
でもルカはそのことが気に入らないようだ。
「最高の女ねえ……」
ルカは桃花を見つめては、そうため息を洩らすようになった。
実に失礼な話だ。
「最高でいいじゃん」
桃花は愛海に同調を求める。
うんうんと愛海は首を縦に振る。
「なんか違うんだよねえ……って余計じゃない」
なるほどルカはヤンキー嫌いだからよね。
喧嘩が強かったりするのは、イメージに合わないんだ、きっと。
「でも好きなんでしょって、私が聞いたのよ、ルカに」
愛海は続きがどうなるか楽しみだった。
物語のページを開いてるようなワクワク感。
この二人の恋愛は単純に面白い。
「好きは好き。でもたまに考えるんだ」
何を考えるって言うのよ。
「ヤンキーより、強いってどうなの?」
愛海は笑いを堪えるのに必死だった。
「……だって、どう思う」
「なるほど……、それはヤンキー嫌いには気になるかも」
桃花って本当男だったら、最高にかっこいいのに。
「でさ、言うにこと欠いて、桃花って、花に例えると、サボテンだなって言うんだよ」
「サボテンかあ、棘だらけってことかな」
「に決まってるじゃない。近寄ると、棘に刺さって痛いおもいするって意味じゃないの」
「言えてるな、桃花、怖いし」
「やっぱ、怖いかな」
「私がヤンキーから守ってあげるって言ってみたら」
「うーん……、そんなこと言われて嬉しいかな」
「さあ」
ルカの言葉の意味は桃花には伝わっていなかった。
ルカはいい意味でサボテンの花と言ったつもりだった。
そして愛海も気がついていた。
ルカがサボテンの花を月下美人という意味で使ったことを。
でもそれを言っちゃうと、仲良くなっちゃうし……。
まあ、言わぬが花ね。
私のギャグさえてるー。