桃花はステージ上から、蘭子を発見した。
ファンって言うのは本当のようだ。
あの時のレディースのメンバーが勢ぞろいしてる。
みんな、桃花の曲を口づさんでる。
ただ桃花の歌は英語の歌詞ばかり。
よく見てると適当英語で歌ってる。
まあ、客のほとんどが適当英語で、サビの部分ぐらいしかちゃんと歌えてない。
蘭子がライブハウスを出ると、桃花が待っていた。
「桃花さん」
蘭子は驚いて立ち尽くした。
蘭子はボコボコにされると、身をひいた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ」
そう言って、桃花は近所のファミレスにみんなを誘った。
それとなく、来夢のことを聞きだすためだ。
どれほど親密だったのか、聞いてみたかった。
ただ直に聞くのは憚られたので、遠まわしに聞いてみた。
「来夢ってあんなにブサイクなのに、どうしてルカと付き合ってたんだと思う」
みんな、変な顔をした。
「ルカって、ブサイクな子が好きだとか……」
みんな、突然、笑い出した。
「心配してるんですか、まさか」
しまった、バレてるじゃないの。
「いやー、あんまりブスだからさ、ちょっとねえ……」
「まさかとは思うんですけど、桃花さんのほうがルカに惚れてるんですか」
桃花は真っ赤になった。
「わかりやすい」
「ルカってそんなにいいですか?芸能人のほうがかっこいい人いっぱいいるでしょ」
「それにルカって、なんか軟弱だし、いじめやすいって言うか、ちょっかい出したくなるって言うか」
そこまで言って、蘭子は桃花の機嫌を損ねたんじゃないかと、黙り込んだ。
「大丈夫ですよ、あれは脅されて付き合ってたようなもんですから」
「脅されて?」
意味が分からなかった。
でも蘭子の話を聞いて納得した。
そして、桃花はホッとした。
初めてルカの過去の相手への嫉妬心から解放された気がした。