そして結局蘭子を避けるようになった。
あんな相手でも、ふったことへの罪悪感みたいのがあった。
ただ避けることで蘭子たちのいじめが再発した。
僕の側に来夢がいない。
来夢はもう別の男と付き合っていた。
それが見るからにガテン系でいかつかったので、驚いた。
なんでも4つも年上で鳶職らしい。
放課後にたまにヤン車で来夢を迎えに来ていて、すっかりその存在は有名になっていた。
線の細いルカとは真逆だ。
来夢の男の趣味に傾向が感じられない。
ブスだからフットワークが軽いのか、誰でもいいような感じさえ受ける。
そんなことより現状がヤバイ雰囲気になっている。
来夢と別れたことでルカのボディガードがいなくなってしまった。
まさに学校という戦場で丸腰だ。
陰湿ないじめがジワジワと始まった。
いたずらととるか、いじめととるか、それは問題だが、相手はいじめる気でやってる。
画鋲が椅子に置かれてたり、そんな小さなことから始まった。
なんで好きな相手を傷つけることができるんだろう。
そんな愛情、受け入れられない。
でも僕には立ち向かう術を持っていない。
やられたら、やられっぱなしだ。
少しずつ周りもいじめにあってると気がつき始めていた。
でもそれを誰も咎めもせず、止めもしなかった。
そんな蘭子のいじめから僕を守ってくれたのは、結局のところ、モトカノの来夢だった。
ある日蘭子が一週間学校に現れなかった。
ボコボコにされて、入院したらしい。
入院したというのはどうもガセネタのようだが、家から出られないほど顔が腫れたらしい。
来夢にヤキをいれられてから、蘭子たちの集団いじめはなくなった。
「女にいじめられるなんて、情けない男だ。せっかくのイケメンが台無しだ」
来夢はルカを見つけるや、肩を抱き、
「そんなに弱虫じゃ、女一人、守れねえじゃねえか」と言って、おなかに一発パンチを入れられた。
体が腹から折れた。
床に転がって悶絶した。
これだからヤンキーは嫌いだ。
かっこいいつもりか。
「じゃあな」と来夢は去っていった。
ヤンキー漫画じゃあるまいし、ぜんぜんかっこよくないよ。
痛いじゃないか、バカ女。
いじめは確かになくなった。
でも絶対感謝しない。
あの女は僕の大切なファーストキスを奪った女だ。
許さない。
許せるもんか、映画みたいなファーストキスをするって決めてたんだから。
鬼に奪われてしまった。
生涯の傷として残るに決まってる。