タイトル「森ガールと盛りあガール」 95 | 可愛い君に愛を囁きたい

「もと嫁は今年40歳になるはずだよ」

「えっ!14年上!」

「そうだね、そんなもんだね」

ババアじゃん。

考えられない。

 どこに惹かれるのよ、離婚して、相手はすぐ再婚したんでしょ。

 かなりの悪女じゃん。

「学生だったんでしょ、相手が仕事してたわけ?」

「保護観察官なんだ」

 保護観察官って、まさか……。

 そうか、警察にお世話になってるよな、そりゃあ……。

「彼女のおかげでまともになれたし、今も感謝してる」

 うーん……。

 どう考えても、仕事を逸脱してる。

 悪を更正させてるうちに子供ができて、結婚したけど、やっぱ、無理って子供だけ連れて、男を捨てたとしか思えない。

「それでまだ好きなんだ」

「そうだね」

「そうだ、子供の写真、見せたげるよ」

 山ちゃんはニコニコして、手帳を取り出した。

 これはいわゆるプリ帳。

 手帳を広げると、子供と撮ったと思しきプリクラが山のように張ってある。

 ヤンキーは単純でピュアだと言うが、まんざら嘘でもないな。

 このまま錯覚させておいたほうがきっと幸せに違いない。

 プリクラの中に登場するおばさんがどう見ても、元嫁のようだ。

 なんというおばさんぶりだ。

 裏切りのない小太り感。

 美人とはほど遠い平凡な顔立ち。

 ただ、写真から漂ってくる感じに悪人要素がまったく感じられない。

 そうなのだ、保護観察官になろうというようなおばさんだ。

 根っこの部分は善人だ。

 いや、山ちゃんの話を足してもきっと善人なのかもしれない。