「もと嫁は今年40歳になるはずだよ」
「えっ!14年上!」
「そうだね、そんなもんだね」
ババアじゃん。
考えられない。
どこに惹かれるのよ、離婚して、相手はすぐ再婚したんでしょ。
かなりの悪女じゃん。
「学生だったんでしょ、相手が仕事してたわけ?」
「保護観察官なんだ」
保護観察官って、まさか……。
そうか、警察にお世話になってるよな、そりゃあ……。
「彼女のおかげでまともになれたし、今も感謝してる」
うーん……。
どう考えても、仕事を逸脱してる。
悪を更正させてるうちに子供ができて、結婚したけど、やっぱ、無理って子供だけ連れて、男を捨てたとしか思えない。
「それでまだ好きなんだ」
「そうだね」
「そうだ、子供の写真、見せたげるよ」
山ちゃんはニコニコして、手帳を取り出した。
これはいわゆるプリ帳。
手帳を広げると、子供と撮ったと思しきプリクラが山のように張ってある。
ヤンキーは単純でピュアだと言うが、まんざら嘘でもないな。
このまま錯覚させておいたほうがきっと幸せに違いない。
プリクラの中に登場するおばさんがどう見ても、元嫁のようだ。
なんというおばさんぶりだ。
裏切りのない小太り感。
美人とはほど遠い平凡な顔立ち。
ただ、写真から漂ってくる感じに悪人要素がまったく感じられない。
そうなのだ、保護観察官になろうというようなおばさんだ。
根っこの部分は善人だ。
いや、山ちゃんの話を足してもきっと善人なのかもしれない。