「相変わらず、ぶっさいくな嫁さんね」
柳下が突然口をはさんだ。
「わっ!」
柳下の登場に桃花はびっくりした。
「なに、驚いてるのよ。さっきから横にいたでしょ」
嘘ばっかり。いつからいたって言うのよ。
「ずっといたでしょ、早瀬さんが来る前からいたわよ」
桃花は背筋に冷たいものが走った。
「本当に幽霊みたいなんだから……」
「本物だったりしてね」
冗談に聴こえないんですけど……。
「ひどいな、ブサイクな嫁って」
「だって、ブサイクじゃないの」
「ちょっとぽっちゃりしてるだけだよ」
「かなりね」
うーん……、どう欲目で見ても、おばちゃんだ。
「早瀬さんと、どっちが美人に見える?」
柳下先輩も無茶な質問をする。
おばちゃんと私を比べるなんて。
「もちろん、嫁さんでしょ」
「はあああー!はあああああー!はあああああああー!」
ぶち切れそうだ。
「こんなの比較する対象にもならないよ」
「目ん玉くりぬいたろか!おっさん」
どこがこのおばさんに負けてるって言うのよ。
「あらら、地が出ちゃってるよ、早瀬さん」
しまった。森ガールらしくないことをしてしまった。
でも、まさか、柳下先輩は本当の私を見透かしてるんだろうか。
不気味だし、江原啓之みたいに見えてるのかな、もしかして?