「早瀬さん、元ヤンでしょ」
山ちゃんが聞いた。
「ヤンキーとヘビメタは違うんだからね!」
「ヘビメタ好きなんだ」
山ちゃんは納得したように、ニヤリとした。
「えっ、早瀬さんって森ガールでしょ」
柳下は衝撃をうけたと言わんばかりに驚いてる。
「もちろん、森ガールですよ」
柳下先輩は理解不能だ。
しかし多分、山ちゃんには見透かされた気がする。
それからしばらくすると、八橋がやってきた。
すっかり日焼けしてさらに真っ黒になっていた。
「ナンパ焼けか」
「農業焼けかな」
「なんだ、それ?」
山ちゃんはそう冷やかして、子供に会いに部室からいなくなった。
桃花は山ちゃんのあとを追いかけた。
「ねえ、山ちゃん、車乗せてよ」
桃花は山ちゃんの車に一度乗りたいという衝動に勝てなかった。
痛車でもいいじゃない。
一度だけトヨタ2000GTに乗りたいんだから。
痛車に乗ったことは隠せばいいし、トヨタ2000GTに乗ったことを自慢すればいいじゃない。
そして桃花はアクセルを踏み込んだ。
「ちょっとだけ学校の周り走ってきていい」
「今から子供に会いに行かなきゃ行けないから、そこまで送ってよ」
こうして助手席に山ちゃんを乗せて、車を走らせた。