「クラプトンきどりか」と後ろで声がする。
聞き覚えのある声。
ルカが振り返ると、大樹が座っていた。
隣には、腹の大きな葉月が座ってる。
「変わらないね、やっぱ、早瀬さんってあの格好のほうが似合ってる」
「そうかなあ?」
大樹の趣味ではなかった。
「似合ってるよ、かっこいいもん」
横の女は誰だろう?
ルカはそう思いながら、それよりもステージで歌う桃花のことが気になった。
ライトハンド奏法、ハミングバード奏法。
「ギターがうまいことは確かか……」
大樹は自分よりはるかにうまくなってることが少し気にいらなかった。
桃花の演奏が終わると、司会者は拍手をしながら、桃花に近寄った。
「はじめの言葉は、メッセージですか?」
「ええ、私の好きな人に聞いてほしくて」
桃花はじっとルカを見つめながら、そう言った。
司会者はその視線に気がついたのか、
「そうですか、届くといいですね」と微笑んだ。
「はい」
桃花はじっとルカを見つめていた。
なのにルカはその視線が後ろの大樹に向けられてると思っていた。
桃花たちは結局特別賞をもらった。
ヘビメタはやっぱりメジャーになれないのだろう。
技術的には問題ないが、売れる曲じゃないのだ。