コンテストが始まった。
いつまでたっても桃花は現れない。
さっきから、すごいロックな曲ばかりだ。
司会はテレビで見る女子アナだ。
「それではエントリーナンバー3番、ユニオン・キラー・サッドネス」
女子アナウンサーがそう言うと、会場が真っ暗になった。
そしてスポットライトが会場に当たった。
ステージ場に突然現れた桃花に、あっけにとられた。
虹色のモヒカン風ヘアースタイル。
側面をカリアゲて、ツンツンに伸ばしたモヒカンは虹色のグラデーション。
派手なメークで、レザーのジャケット。
腕にはハートのタトゥー。
ただ、ジャケットの下には、森ガールみたいな花柄ワンピース。
スカートは斜めに切れていて、ガードルの隙間から生足が見えている。
ストッキングにはバラの花と、茨が巻きついている刺繍がしてある。
メタルでもなく、パンクでもなく、ゴスロリでもない。
「本当の私を見てほしいから、好きな人に聞いてほしい」
そう前置きして、桃花はギターを弾き始めた。
桃花はギンギンにギターをかなで、ハイトーンボイスで歌い上げる。
ギンギンのヘビメタだ。
「桃花……」
ルカは目を疑った。
目の前で金切り声を上げる女は間違いなく、ルカの知らない桃花だった。
ギターのヘッドにタバコをさして、間奏の間、タバコをふかし、煙が悪魔の儀式のように立ち上る。