「いいじゃん、モテたくてミュージシャン目指したんだし」
「で、モテてるわけ」
「まだこれからだな。でもファンの中に結構可愛い子いるし」
なるほどね、そういうことだったんだ。
「でもさ、ファンには手を出すなって、うるさいんだよね」
だから、手っ取り早く、私なんだ。
「じゃあ、私にも本気じゃないんだ」
「いや、それは分からないな、結構、マジかもしれないし」
なんか嘘くさい。
「桃花に可愛いって言ったのは本気だからな」
なんかすんなり喜べない。
「彼いるんだよ、一応」
桃花は取り合えず釘をさした。
「一応か……」
大樹はニヤリとした。
「そんなにマジじゃなさそうだし、奪ってやろうかな」
桃花はドキッとした。
大樹の吐き出すタバコの煙が煙たい。
桃花は咳き込んだ。
「あ、ごめん」
大樹はタバコをもみ消した。
「そういや、タバコやめたんだ?」
当たり前だ。
森ガールにタバコは似合わない。
「チェーンだったくせに、よくやめれたな」
これもすべて森ガールになるためよ。
「すべてあの男のためなんだ」
「そういうわけじゃないけど……」
何言ってるんだろう。
はっきりルカのためと宣言すればいいのに。
「お前の彼さ、おとなしそうだね。昔のお前のこと知ってるの?」
「知らないよ」
「だろうね」
「知ったら、付き合わないかもね」
大樹は勝ち誇ったようにニヤリとした。