タイトル「森ガールと盛りあガール」 55 | 可愛い君に愛を囁きたい

結局回避する方法を思いつかないまま、会場に座っている桃花だった。

森ガールに変身した私に気がつかないかもしれない。

そうよ、麦わら帽子で顔隠してるんだし、ましてイメージが違うから、気がつかないかもしれない。

いつもより目深に帽子をかぶり顔を隠した。

声さえ発しなきゃ、気がつかないわ。

なるべく目を合わさないようにしないと。

そしてミニ・コンサートが始まった。

大樹だ。

大樹以外にもゲストがいた。

それでも大樹に対する声援が一番多かった。

すでにファンがいるようだ。

いったん大樹は舞台からはけた。

そして司会者に大樹が紹介され、ギターを抱えて登場し、椅子に座って弾き語りを始めた。

なんか歌ってる姿がかっこいい。

思わず顔を上げて、大樹を見た。

大樹と目が合う。

さっと目をそらし、俯いた。

ヤバイ、ばれるって。

俯いたまま、曲だけ聞いていた。

歌詞に溢れる愛の言葉。

これがすべてあの憎き森ガールに捧げられているのかと思うと、ムカついた。

森ガールめ!

あのくそ女。

やっぱり卒業式、血祭りにあげればよかった。

コンサートは無事に終わった。

大樹にはバレなかったようだ。

ファミレスで食事をしてる間中、ルカは一人で興奮している。

「大樹、かっこいいよな」

 何度同じことを言うんだろう。

「ほんと、最高だ」

曲の良し悪しは趣味の問題だが、大樹が誉められるとなぜか嬉しかった。