結局回避する方法を思いつかないまま、会場に座っている桃花だった。
森ガールに変身した私に気がつかないかもしれない。
そうよ、麦わら帽子で顔隠してるんだし、ましてイメージが違うから、気がつかないかもしれない。
いつもより目深に帽子をかぶり顔を隠した。
声さえ発しなきゃ、気がつかないわ。
なるべく目を合わさないようにしないと。
そしてミニ・コンサートが始まった。
大樹だ。
大樹以外にもゲストがいた。
それでも大樹に対する声援が一番多かった。
すでにファンがいるようだ。
いったん大樹は舞台からはけた。
そして司会者に大樹が紹介され、ギターを抱えて登場し、椅子に座って弾き語りを始めた。
なんか歌ってる姿がかっこいい。
思わず顔を上げて、大樹を見た。
大樹と目が合う。
さっと目をそらし、俯いた。
ヤバイ、ばれるって。
俯いたまま、曲だけ聞いていた。
歌詞に溢れる愛の言葉。
これがすべてあの憎き森ガールに捧げられているのかと思うと、ムカついた。
森ガールめ!
あのくそ女。
やっぱり卒業式、血祭りにあげればよかった。
コンサートは無事に終わった。
大樹にはバレなかったようだ。
ファミレスで食事をしてる間中、ルカは一人で興奮している。
「大樹、かっこいいよな」
何度同じことを言うんだろう。
「ほんと、最高だ」
曲の良し悪しは趣味の問題だが、大樹が誉められるとなぜか嬉しかった。