タイトル「森ガールと盛りあガール」 54 | 可愛い君に愛を囁きたい

次の日の朝、桃花はバンド連中に会いたくなかったので、返事も曖昧に逃げるように、東京へ戻ることにした。

ルカに会うとホッとした。

地元の連中に会うより、たった一日会えなかったルカのほうが懐かしく感じられた。

なんだろう、地元の連中の恋愛話を聞いたせいだろうか、ルカの顔を見るなりルカに飛びついた。

そしてルカにキスをした。

そして地元での騒ぎを無視し、東京でルカという幸せだけに酔いしれていた。

大樹のデビュー曲が発売されると、いろんなメディアで大樹の姿を目にするようになった。

大ヒットとはいかなかったが、そこそこ話題になっていた。

そんな中、事件が起きた。

そう、どうして交わそうか。

回避方が思いつかない大事件が起きた。

「ねえ、黒岩大樹って、良くない」

ルカがいきなりそう言った。

ルカの口から、大樹の名前を聞かされた。

「好きなんだよねえ、黒岩大樹」

好きそうだ。

なぜ、最初にそう思わなかったんだろう。

大樹の曲って、まさにルカのツボじゃない。

「実はさ、エフエム番組の公開録音のチケット、手にいれたんだ」

「えっ?」

ラジオのイベントでゲストライブみたいなやつだ。

ラジオ局のちっぽけな会場で100人ぐらいの前で数曲演奏するだけ。

でもその狭さが脅威だ。

武道館ぐらいでっかければ、大樹は桃花に気がつかないかもしれない。

でもそんなちっぽけな会場じゃ、見つかるじゃない。

森ガールに変身した私を見て、大樹はどう思う。

きっと、大笑いするに決まってる。

噂は地元に響き渡り、私は地元に二度と戻れなくなるんだわ。

そんなの、絶対に嫌。

回避しなきゃ。

でもどうやって……。