次の日の朝、桃花はバンド連中に会いたくなかったので、返事も曖昧に逃げるように、東京へ戻ることにした。
ルカに会うとホッとした。
地元の連中に会うより、たった一日会えなかったルカのほうが懐かしく感じられた。
なんだろう、地元の連中の恋愛話を聞いたせいだろうか、ルカの顔を見るなりルカに飛びついた。
そしてルカにキスをした。
そして地元での騒ぎを無視し、東京でルカという幸せだけに酔いしれていた。
大樹のデビュー曲が発売されると、いろんなメディアで大樹の姿を目にするようになった。
大ヒットとはいかなかったが、そこそこ話題になっていた。
そんな中、事件が起きた。
そう、どうして交わそうか。
回避方が思いつかない大事件が起きた。
「ねえ、黒岩大樹って、良くない」
ルカがいきなりそう言った。
ルカの口から、大樹の名前を聞かされた。
「好きなんだよねえ、黒岩大樹」
好きそうだ。
なぜ、最初にそう思わなかったんだろう。
大樹の曲って、まさにルカのツボじゃない。
「実はさ、エフエム番組の公開録音のチケット、手にいれたんだ」
「えっ?」
ラジオのイベントでゲストライブみたいなやつだ。
ラジオ局のちっぽけな会場で100人ぐらいの前で数曲演奏するだけ。
でもその狭さが脅威だ。
武道館ぐらいでっかければ、大樹は桃花に気がつかないかもしれない。
でもそんなちっぽけな会場じゃ、見つかるじゃない。
森ガールに変身した私を見て、大樹はどう思う。
きっと、大笑いするに決まってる。
噂は地元に響き渡り、私は地元に二度と戻れなくなるんだわ。
そんなの、絶対に嫌。
回避しなきゃ。
でもどうやって……。