「ああ、フルんじゃなかったな」
大樹は何度もその言葉を連発する。
ヤバイ、ヤバ過ぎでしょ。
ああ、私は何してるんだろう。
大樹からメールで誘われた。
まあ、地元の友達として会ってるんだから。
普通っちゃ、普通なんだけどさ。
普通じゃないよね、絶対。
でもごめん、ルカ。
私、気持ち抑えられない。
テレビ局の仕事の前に会ってくれって、私、ヤバイかも。
しかもよりにもよって、バリバリデートコースだし。
お台場めぐり、ビーナスフォートでランチ。
レインボーブリッジ、見てるし。
「桃花がそんなに可愛いって気がついてたら、お前と付き合ったのに」
大樹が見つめてる。
「あの頃のお前って、いかつかったし、近寄りがたいって言うか、怖かったし」
なんで、目そらしてるんだろ。
ああ、タバコ吸いてえー。
間が持たないじゃないの。
「でも今のお前は本当、可愛いし、タイプだわ」
「ねえ、それって、告ってるの」
「そう聞こえた?」
「うん」
「じゃあ、そう思ってもらっていいよ」
ヤバいんじゃないの。
「二股かけようとしてる、もしかして?」
まさかミュージシャンだから、許されるなんて思ってる?
「なわけじゃいって」
「彼女は?」
桃花は取り合えず、釘をさしてみた。
「ああ、あいつかあ……、実はさ、プロになるから別れたんだ」
さらりと、大樹は答えた。
別れた?
あまりにもあっさり大樹は言い放った。