キャンパスでルカが一人で歩いてると、桃花が走ってあらわれた。
息を切らしてる。
よっぽど走ってきたのだろうか?
息を整えると、いきなり聞いた。
「ねえ、ルカ、本当の私を見てどう思った」
「どうって?」
あれはやけになってやったことだ。
慰めてやるべきなのか、元彼として?
でも桃花はもう森ガールじゃない。
ただのヤンキーだ。
今の服装にしたってヤンキーみたいじゃないか。
そう、桃花はダメージジーンズに、チェーン。
ライダースのジャケットにドクロ柄に包帯がまいてるようなTシャツ。
リベットいっぱいのベルト。
つま先のとんがった靴。
「だって、それって桃花じゃないだろ」
「そんなことないよ、今の私が私だよ」
支離滅裂だな。よっぽど失恋が辛かったんだ。
「ルカの知ってる森ガールは、本当の私じゃないの」
行き着く先がこの服なんて。
誰に対して怒ってるんだろう。
大樹への嫌がらせだろうか。
ルカは同情した。
「本当の私はこんな感じなの」
完全に精神を病んでる。
「これでもしルカが好きでいてくれるなら」
自分が病気だと気がついてないのかもしれない。
だとしたら、それを教えてあげないと。
「だって、そんなの桃花じゃないよ。ただのヤンキーじゃないか」
その言葉にカチーンときた。
「ヘビメタとヤンキーは違うんだからね」
桃花は怒りをぶつけた。
しかしその姿をルカは同情の目で見ていた。
「ヘビメタをヤンキーと一緒にしないでくれる」
「ごめん」
とにかく自分が変だということに気がついてないんだ。
それならそれに気付かせてあげないと。
僕が桃花にしてあげられること。
それはもうそれくらいしかないのかもしれない。