桃花はコンサートが終わると、急ぎ足に愛海を追いかけた。
出口の辺りにまだ蘭子たちに囲まれていた。
客が桃花に気がついて握手を求めてきた。
桃花は面倒臭いと思いつつ、握手をしながら、愛海に声をかけた。
「愛海、ごめんね、余計なことしちゃった」
「いいよ、別に」
「でもね、若菜ちゃんは愛海のことを愛してるんだよ」
「分かってる」
「それだけ伝えてくれって言われたから」
「そのうち、また桃花のコンサートに行くから」
「えっ……」
「だからって、許すってことじゃないからね」
「うん、でも、良かった」
「あんな父親でも一応父親らしいから」
そう言い残して愛海は蘭子たちに連れられて出て行った。
楽屋に戻ると、若菜ちゃんが泣いていた。
桃花を見るや、「ありがとうね」と手を差し伸べた。