それから一週間もしないうちに愛海は驚くべき行動に走った。
なんと大学を辞めたのだ。
「ねえ、まさか私が余計なことしたから?」
桃花は愛海に尋ねた。
「そうね、その通りよ。桃花のせいだわ」
ええー……、私のせいで大学を辞めちゃうわけ。
お父さんとの再会がそんなにショックだったの。
「私、美大に進もうと思って」
「美大?」
「実は、絵を志してたの。でもね、将来性のない世界じゃない。だから普通の大学に進学したんだけど、やっぱり諦めきれないや」
だからあんなに絵がうまいんだ。
「ママに悪いし、まあ、お父さんがあんなんだし、私まで反旗を翻したら、ママがおかしくなるかもしれないじゃない」
確かに私だったら、グレるかもしれない。
ヘビメタやめて、演歌を聞き出すかもしれないわ。
「でもね、お父さん見てて思ったの。生き生きしてる」
うーん……。あれは生き生きしてるのだろうか……。
腐った熱帯魚みたいだ。
「私も自分らしく生きたいって思ったの」
自分らしくか……。
私はまだ森ガールを捨てきれない。
ルカに嫌われるのが怖いから……。
やっぱり自分らしく生きるって難しい。
「私ってやっぱりお父さん似なんだね」
「全然似てないよ。だって若菜ちゃん、ううん、お父さん、キモイし、愛海は可愛いし、どうして二人が親子なのか、信じられないし」
「でもね、私が絵を好きなのって、多分父親に似たからだと思うよ」
「ふうーん……」
若菜ちゃん、自分の顔をキャンバスにしてるのかな。