「手紙ちょうだいね」
「だって、手紙じゃ、桃花、口から火を吹いてやくじゃない」
「えっ、そんなことしたっけ?」
「ルカのラブレター読みもしないで、ライブで焼き捨てたでしょ、覚えてない?」
「覚えてない」
可哀想に、あんな熱烈なラブレター。
部室のパソコンに下書きが残ってるのに。
読んだら、きっと感動するのに。
それを目の前の友人が教えもしないなんて。
ルカ、可哀想。
だって楽しんだもん。二人の喧嘩。
「喧嘩したら、フランスにパソコン使って、テレビ電話してね」
そうしたら、見つかるかもしれないからさ、ラブレター。
「うん、そうする」
愛海がフランスへ旅立った。
愛海の個展を訪れたフランス人。
実は世界的な画商だったらしい。
冷やかし程度に訪れた愛海の個展を見て、最初はこの程度かと思ったらしい。
しかし一枚の絵を見た瞬間衝撃を受けたのだという。
それこそが妖精を食らう気持ち悪い絵。
何でもフランスの業界紙に愛海を賞賛したらしく、すでに愛海の全ての絵を買い上げているらしい。
留学以前にプロになることを薦められたが、技術を磨くためにフランスの美大に籍を置くことになったようだ。
そういう話になってると聞かされて、桃花は大変なことを思い出した。
愛海に桃花の絵を描いてもらったことがある。
その絵は今無造作に本棚の上に飾ってある。
この絵、いくらになるんだろう?
桃花は取り敢えず絵を額に入れることにした。