ねずみ
新潟の方で大きな地震があったのですね。
台風が多く、雨も長く、いろいろ緩んでいるから被害も
大きいのだという解説を拾った新聞で読みました。
今年は、本当に雨の日が多い。
屋根のある場所で眠らないようになってから、
自然現象や災害に敏感になってきた。直感が働くとでもいうのだろうか?
いつもと空気が違う感じがするのだ。 これは説明できない。
人が何を考えているのかも、なんとなくわかったりするときもある。
テレパシーとかいうものではなく、勘が妙にするどくなるという範疇で。
しっかりと作られた屋根や壁に守られて眠っている間はそういうことはなかった。
常に空腹だというもの関係あるのかもしれない。
自分は都市のおこぼれで生きているので、
その都市になにかあるときは、なんとなくわかるのでは?
という気がしている。
自分たちは都市という船にまぎれこんだねずみで、
そのねずみが見えなくなってきたときは、少し気をつけた方がいいかもしれない。
台風が多く、雨も長く、いろいろ緩んでいるから被害も
大きいのだという解説を拾った新聞で読みました。
今年は、本当に雨の日が多い。
屋根のある場所で眠らないようになってから、
自然現象や災害に敏感になってきた。直感が働くとでもいうのだろうか?
いつもと空気が違う感じがするのだ。 これは説明できない。
人が何を考えているのかも、なんとなくわかったりするときもある。
テレパシーとかいうものではなく、勘が妙にするどくなるという範疇で。
しっかりと作られた屋根や壁に守られて眠っている間はそういうことはなかった。
常に空腹だというもの関係あるのかもしれない。
自分は都市のおこぼれで生きているので、
その都市になにかあるときは、なんとなくわかるのでは?
という気がしている。
自分たちは都市という船にまぎれこんだねずみで、
そのねずみが見えなくなってきたときは、少し気をつけた方がいいかもしれない。
こうりゃん先生の「書」
博学のこうりゃん先生の趣味は「書」。
ときおり、ボロボロの布から高そうな硯と墨を出して、丹念に磨る。
「こうして磨る時間も含めて、“書”なんです。
その点私たちは贅沢ですよ、磨る時間はたくさんあるんですから」
そういって微笑む。皮肉がカラッとしているのが先生のいいところだ。
そして、出来上がりもご覧のとおり見事。
「先生!はいっ!先生!」
とキンさんが挙手。
こうりゃん先生はいつも
「幸い私たちも漢字の国の人です。
この紙をじっと見つめていると、自然に意味が伝わるものですよ」
と言う。
いわばクイズを出しているような感覚。これが嫌味にならないのも、
先生の いいところだ。皆も楽しみにしている。
キンさんは頭をひねりながらも
「うっと、あれだ・・・あれこれ憂慮しても
ナンだから、明日は来るんだし、寝ちまえ!だ!どうよ先生!」
と答える。
「正解!」と先生。キンさんはああ見えて意外と頭の回転が速く、
「キンさん意訳」がいつも入って楽しい。
そして、楽しさの中にいつも書には教訓が入っている。必要以上に
落ち込んだ仲間がいれば今日のような書。
逆に怠惰な空気が広がって いるときは、皆を奮い立たせるような書。
そして、しばしどこかの木や壁に貼られたあと、いつも
「これ貰って いいかい?」
と聞いて、キンさんは大事そうにねぐらへ持っていく。
ちなみに先生の書の横にある張り紙は、以前マーちゃんが
目覚まし時計を盗まれたときに、怒って突発的に書いたものだ。
今は すっかり忘れている。それがマーちゃんのいいところだ。
ときおり、ボロボロの布から高そうな硯と墨を出して、丹念に磨る。
「こうして磨る時間も含めて、“書”なんです。
その点私たちは贅沢ですよ、磨る時間はたくさんあるんですから」
そういって微笑む。皮肉がカラッとしているのが先生のいいところだ。
そして、出来上がりもご覧のとおり見事。
「先生!はいっ!先生!」
とキンさんが挙手。
こうりゃん先生はいつも
「幸い私たちも漢字の国の人です。
この紙をじっと見つめていると、自然に意味が伝わるものですよ」
と言う。
いわばクイズを出しているような感覚。これが嫌味にならないのも、
先生の いいところだ。皆も楽しみにしている。
キンさんは頭をひねりながらも
「うっと、あれだ・・・あれこれ憂慮しても
ナンだから、明日は来るんだし、寝ちまえ!だ!どうよ先生!」
と答える。
「正解!」と先生。キンさんはああ見えて意外と頭の回転が速く、
「キンさん意訳」がいつも入って楽しい。
そして、楽しさの中にいつも書には教訓が入っている。必要以上に
落ち込んだ仲間がいれば今日のような書。
逆に怠惰な空気が広がって いるときは、皆を奮い立たせるような書。
そして、しばしどこかの木や壁に貼られたあと、いつも
「これ貰って いいかい?」
と聞いて、キンさんは大事そうにねぐらへ持っていく。
ちなみに先生の書の横にある張り紙は、以前マーちゃんが
目覚まし時計を盗まれたときに、怒って突発的に書いたものだ。
今は すっかり忘れている。それがマーちゃんのいいところだ。
犬の話(後編)
赤い首輪はそんなに痛んでいない。
なにか飼い主の手がかりがないかと、
その首輪に触ろうとすると、歯を剥き出して「ウゥ~」と小さく唸ってみせる。
「かわいそうに、飼い主に捨てられたことがわからないんだよ」
カズ姉が、首輪をつけてくれた主人に対する忠誠から、力もなく唸る犬を見て、
ポロポロと涙をこぼした。
半日ほど様子を見たが、食べ物はおろか、もう水も飲めないようだ。
こうりゃん先生が
「動物は保険が効きませんからね、
医者に連れていくととんでもない金をふんだくられる。
かといって、保健所に連れていき、安楽死させるという選択も辛くてできない。
不景気なときはね、病気が放置される動物が増えるんですよ」
「だからといって…!!ひどいことしやがる」
キンさんが真っ赤な目で吐き捨てる。
それから数時間もしないうちに、ワン!と短く一声鳴いて、犬は死んでしまった。
道端で車にはねられた犬や猫は、清掃局がきて、ゴミとして片付けられる。
道端で死ぬものは、人間だって青いシートで巻かれて
ゴミのように 片付けられる。
そういう光景はせつないけれど、それが自分たちの現実だ。
「せめて、飼い主のところで死ねたらねえ…」
まだ暖かい犬の体をなでながらカズ姉が泣くと、もうみんなことばにならない。
家族がそばにいないという死に方は、自分で選んだ人生のはずだった。
この捨てられた犬とは違って。
何もわからずに知らない場所に連れてこられて、ひとりで死んだ犬と違って。
公園の隅に犬を埋めようと思ったが、そう深く掘れそうもないし、
「何かうつる病気で死んだのだったらまずいね」
というこうりゃん先生の一言で、
結局、もとのダンボールに入れて、人目につくところに置いておくことにした。
誰かが、役所に連絡して、処分されることになるのだろう。
「バカ、おまえもったいないよ」
キンさんが、自分の花柄のブラウスで犬のからだをくるもうとする
カズ姉を制したが、
「だって…寒いよ、かわいそうだよ」
といって聞かない。
いつも捨て猫、野良猫に餌をあげているカズ姉が、
そうすることで少しみんなホッとした。
カズ姉の花柄のブラウスにくるまれて、
この犬は、もうゴミではない。
静かに手を合わせる。
乞食というのは、なにも人間だけのことじゃない。
心無い飼い主に捨てられてしまった動物たちだって、乞食なんだ。
病気に対して手が尽くせないのなら、
せめて息をひきとるときは、そばにいてやってほしかった。
ただそれだけを想う。
なにか飼い主の手がかりがないかと、
その首輪に触ろうとすると、歯を剥き出して「ウゥ~」と小さく唸ってみせる。
「かわいそうに、飼い主に捨てられたことがわからないんだよ」
カズ姉が、首輪をつけてくれた主人に対する忠誠から、力もなく唸る犬を見て、
ポロポロと涙をこぼした。
半日ほど様子を見たが、食べ物はおろか、もう水も飲めないようだ。
こうりゃん先生が
「動物は保険が効きませんからね、
医者に連れていくととんでもない金をふんだくられる。
かといって、保健所に連れていき、安楽死させるという選択も辛くてできない。
不景気なときはね、病気が放置される動物が増えるんですよ」
「だからといって…!!ひどいことしやがる」
キンさんが真っ赤な目で吐き捨てる。
それから数時間もしないうちに、ワン!と短く一声鳴いて、犬は死んでしまった。
道端で車にはねられた犬や猫は、清掃局がきて、ゴミとして片付けられる。
道端で死ぬものは、人間だって青いシートで巻かれて
ゴミのように 片付けられる。
そういう光景はせつないけれど、それが自分たちの現実だ。
「せめて、飼い主のところで死ねたらねえ…」
まだ暖かい犬の体をなでながらカズ姉が泣くと、もうみんなことばにならない。
家族がそばにいないという死に方は、自分で選んだ人生のはずだった。
この捨てられた犬とは違って。
何もわからずに知らない場所に連れてこられて、ひとりで死んだ犬と違って。
公園の隅に犬を埋めようと思ったが、そう深く掘れそうもないし、
「何かうつる病気で死んだのだったらまずいね」
というこうりゃん先生の一言で、
結局、もとのダンボールに入れて、人目につくところに置いておくことにした。
誰かが、役所に連絡して、処分されることになるのだろう。
「バカ、おまえもったいないよ」
キンさんが、自分の花柄のブラウスで犬のからだをくるもうとする
カズ姉を制したが、
「だって…寒いよ、かわいそうだよ」
といって聞かない。
いつも捨て猫、野良猫に餌をあげているカズ姉が、
そうすることで少しみんなホッとした。
カズ姉の花柄のブラウスにくるまれて、
この犬は、もうゴミではない。
静かに手を合わせる。
乞食というのは、なにも人間だけのことじゃない。
心無い飼い主に捨てられてしまった動物たちだって、乞食なんだ。
病気に対して手が尽くせないのなら、
せめて息をひきとるときは、そばにいてやってほしかった。
ただそれだけを想う。