乞食blog -19ページ目

キンさんの大リフォーム

気温が急激に寒くなってきた。
そろそろ冬支度を始めないと寒くて動くのがおっくうになる。
キンさんとカズ姉も小屋の改装を始めたが、
しばらくするとキンさんの怒鳴り声が聞こえてきた。

「オメェがよー!こっちに付けろって言ってきかねぇから
そうしたんじゃねぇかよー!」

どうやら原因はカズ姉の設計ミスらしい。
せっかくキンさんが拾ってきた
防寒効果の高い冷蔵庫用の厚いダンボールを
カズ姉の言うとおりに切ったら無駄になったとのこと。

怒鳴られたカズ姉も怒鳴り返す

「あんた男だろー?女はさぁ、こういうの苦手だからさぁ、
間違えることがあるってわかるだろーがぁ!
私だってちゃんとこうなるって説明されれば
バカじゃないからわかるのにさぁ!
それを今になってあーだこーだ女のせいにするなんて
酷い野郎だねぇ!バカ!」

これを聞いてキンさんがさらに怒った

「だからおまえが切れって聞かないからやったんだろがぁ!
だからさぁ、おれがちゃんと説明してるのに
おまえが聞かないからこうなったんだろがぁ!バカ野郎!」

「野郎じゃねぇよー!女だバカ野郎!」

こうなるとお互い譲らないので必ずヤマさんが間に入る。
いつも山さんばかりに二人の喧嘩を任せてるので申し訳ないと思い、
自分も拾ってきたダンボールを二人にあげた。

山さんの説得もあり、
あげたダンボールも使い無事改装もできたので
二人の機嫌もすっかり直った。

「おれたちよぉ、ほんとバカだからさぁ、
話し合えばいいのにすーぐカっとなっちゃって。
毎度迷惑かけて本当にみんなすまねぇなぁ!」

「ごめんねぇ、ありがとうねぇ!あんたもごめんねぇ。」

いつも仲が直ると同じ事を言うので安心はできなかったが、
愛想をつかすことなく、迷惑しているみんなの為に何度も仲裁をこなす
ヤマさんには尊敬させられる。

ヤマさんを尊敬する度に、
なぜこのような立派な人が職に就けないのか、
世の中がわからなくなる。

赤きラーメン

雨は上がったが、気温が急激に下がったようだ。
山さんの毛布が心底ありがたい。

寒さに耐え切れなかったので、
虎の子だった赤い袋のキムチラーメンを作り、
鍋からそのまま食べる。
麺を食べ終わったら、スープを湯で薄め少しずつ飲む。
至福の時だ。

スープも飲み干し落ち着いた後、これから訪れるであろう、
本当の冬を思い、ラーメンを食べてしまった事を後悔をした。
この程度の寒さに負けてしまった意思の弱い自分が恥かしかった。

山ちゃんのプレゼント

朝方雨が上がった頃、
山ちゃんがリヤカーを引きながらやってきた。

「暇ならちょっとつきあわねえか?」

聞かれるまでもなく暇だったので、
山ちゃんと連れ立って公園を出て。
二人で話しながら、河川敷へ向かって歩いた。

しばらくすると、山ちゃんが
「こっちだ」
と、橋の方へ向かっていった。

その下には、テレビや電化製品が
山積みされた奇怪な小屋があり、
山ちゃんが小屋に声をかけると、
元電気屋のタカ坊が「ヨッ!」と顔を出した。

タカ坊とは何度か会った事はあるが、
小屋に来るのは初めてだった。
いつもタカ坊が公園に来てくれるので、
ここまで来る事が無かったのだ。

タカ坊は、山ちゃんと一言二言会話をすると、
リヤカーに毛布を積み込んだ。

「これ、オメエのだ。山ちゃんから頼まれててさ。」

「えっ!」と驚いた顔で山ちゃんを見ると、

「ほら、オメエの布団もうボロボロだったからよ。
…ついでだ、ついで。」

と、山ちゃんは鼻を掻きながら照れくさそうに笑った。
私は山ちゃんの粋な計らいに、驚きながらも心から感謝の意を述べた。

河川敷を歩く親子の服装が、
本格的な冬を迎えるコトを告げているようだった

氷雨

すっかり寒くなったこの時期の雨は本当に厳しい。
下手に濡れようものなら命に関わるので、
屋根のある場所まで移動し、ある服を全て身につけ、じっとうずくまる。

顔を伏せていても感じるほど、通行人の視線が痛い。
雨が止むまで耐えるしかない。

失礼な昼食

新潟の地震被害は、
時間がたつにつれて拡大していっているようだ。
冬将軍の近づくこの季節に、
余震の続く野外での寝起きの様子の写真が
新聞紙上に大きく載せられている。

言葉もなく、その新聞写真をみつめていると、
通りかかった若者が

「ひどいですね。なにかできることがあればいいのだけど」

と声をかけてきた。
そしてこちらにむかって

「同じ境遇ですね」

とつぶやく。冗談じゃない。
新潟の人たちは全くの不可抗力で、
この寒空に着のみ着のままで、
いきなり放り出されたのだ。

自分たちのように、自分自身のふがいなさのせいで、
ここにこうしているのとはわけが違う。

「あんまり失礼なこというなよ」
といってやろうとしたら、

若者の姿は消えていて、
コンビニの弁当と饅頭がふたつと
タバコが入っている袋が置かれていた。

しゃくぜんとしないが、ありがたくいただく。
こういうところが、
もうほんとうにだめだと思いながら、まともな飯。

もっとひどいことに、食い終わるまで
誰も来ないといいと思った。

ひとりで全部食べたい。
饅頭もふたつあわてて飲み込んだから、
喉が詰まってくるしかった。

もうすぐ冬が来る、心に余裕がないのが辛い。
最低の自分が、ただ満腹で座っている。