乞食blog -22ページ目

賞味期限

賞味期限切れの缶詰を手に入れる。
半分以上は、煮小豆。

久々の雨で、残飯を探しに遠くまでは行きにくいし、
このあたりの普通の飲食店だと、
自分たちのような人間に触らせないために洗剤がまぶされているので、
煮た小豆でも助かる。

ご存知だろうか?
賞味期限というのは、風味や味の保障はこの日にちまでということで、
腐敗したり食べられないということはない。
まだまだ充分にいただける。

都会では、毎日大量の「賞味期限切れ」の食べ物が
ゴミの山になっている。
こうりゃん先生いわく

「こういう街や暮らし方のために、我々はがんばってきたわけでしょう?
だったら、こうして出た食べ物のゴミをいただくのは、
年金を受取るようなものですよ」

わかったようなわからないような。

砂糖の入らない煮小豆は、昔、田舎で食べた味だった。
あのときは甘みとしてかぼちゃが入っていた。
小豆なんて、何年ぶりで食べたかわからないけれど、
味って覚えているもんですね。

幸せ

涼しくなってから、時々みかける人がいる。
よく見るとスーツがよれよれなのだが、
ぱっと身はごくごく普通のサラリーマンと言った感じだ。
寝起きはここでしているみたいだけど、昼間はあまり姿をみかけない。

「あの人はなんでここにいるのだろう?」

今朝、水を飲みに水道のところにいくと、その人が顔を洗っていた。
こちらが何も聞かないのに、高揚したその人は、
「おはようございます。私これから、出かけるのですよ。
実は、久しぶりに娘に会えることになりましてね。
いやぁ、お恥ずかしい話です。ハハッ」
と、頭を掻いた。

そして
「急にすいませんでした。僕、カネヤマといいます。
金はないんですが、カネヤマです」
そういって少し笑うと、蛇口の順番を譲ってくれた。

その男の様子を見て、「あ、家に帰るのだろうな」と思った。
すくなくても、もうここには来ない。そんな人たちを幾人か見てきた。

その後、少しだるかった自分にもやる気のようなものが出てきて、
雨水で流されてきたゴミや枯葉の掃除をした。
少しでも嫌われないように、周辺はきれいにしているつもりだ。

「娘さんと無事会えたのだろうか?」

僕はカネヤマさんに訪れた幸福について、
少しの間だけ考えていた。朝の出来事は幸福のおすそ分けだ。
カネヤマさん、ありがとう。

望月の包み

駅前でよく見かける、望月という男がいる。
我々のグループには入らず、
あちこちに古本や拾ってきた雑貨を隠しており、
それを売って小銭を稼いでは、
ファミレスや漫画喫茶で夜を明かしている。

「俺はおめぇらと違って屋根付きだからよ。一緒にすんなよな!」

という、自慢にならない自慢が口癖のイヤなオヤジだ。

昨日、山ちゃんがうなだれて歩いている望月を見かけたという。
何でも、台車に縛って歩道橋の下の植え込みなどに隠していた商売用の品が、
台風でことごとくやられたらしい。

声をかけてやろうと近づいた時、
一つだけ大事に抱えた包みを
道端で開け始めたそうだ。
それを見た山ちゃんは、声をかけずに帰ったという。

「あいつの持ってた包み、何だと思う?」

何故か涙目の山ちゃん。

「あいつに残った、たった一つの荷物ってのさ、
あいつのおふくろさんの位牌だったんだよ…」

望月は、包みから出した位牌を抱きしめ、
人目もはばからず号泣していたそうだ。

カマンベール

今日は竹輪にチーズが入ったアレを手に入れる事ができた。
昔妻がよく作ってくれたメニューだ。

一つ口に入れてみる。
様々な思い出がよみがえり、 あまりにも切なく、苦しく、
どうしても飲み込めない。

捨てるのも勿体無いので、 以前の梅干のお返しにと
ヤマさんにプレゼントする事にした。

ヤマさんは 「ありがとう」とだけ言っただけで、
何も聞かず受け取ってくれた。

マリリン・モンロー

どこだかの絵の大学に通ってるという学生が、
「ダンボールに絵を描かせてほしい」とやってきた。

最初は皆相手にしなかったが、
キンさんがそいつのことを気に入ったらしく、
「俺んちの壁に香川京子かなんか描いてくんねェかな」
と言うと、面白がって皆も寄ってきた。
学生は「誰ですかそれ」なんて言ってたけど、
二十歳かそこらじゃ知らなくてもしょうがないよな。

それでも学生は何かの絵を描き始めて、
しばらくの間、私達の所へ通うようになった。
みんなに「画伯」と呼ばれてからかわれたりすると、
顔を真っ赤にして照れる可愛いやつだ。
酒を飲ませてやると、さらに赤くなっていた。

何日かすると、キンさんの家の壁に
スタイルのいい金髪女の絵が出来上がった。
お世辞にも上手い絵とは言えないシロモノだったが、
ホクロでマリリン・モンローだということはわかる。

キンさんは首をひねっていたけれど。