面白いし、大好きだけど、絶対にヒットしないタイプの映画「海辺へ行く道」 | キネマ画報

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名古屋在住映画好きダメ人間の映画愛をこめてのブログ多少脱線ありです。


三好銀の人気漫画「海辺へ行く道」シリーズを「俳優 亀岡拓次」「いとみち」の横浜聡子監督のメガホンで映画化した作品です。

 

瀬戸内海の海辺の町で暮らす14歳の美術部員・奏介。この町はアーティスト移住支援を掲げ、あやしげなアーティストたちが往来している。奏介とその仲間たちは、演劇部に依頼された絵を描き、新聞部の取材を手伝い、夏休みを送っていた。そんな中、奏介たちにちょっと不思議な依頼が飛び込んできて…

 

初期の横浜聡子作品の変な感じのドラマが全開で原作付きとは思えないくらい横浜聡子監督にしか作れない映画になっていました。

美術部の中学生を中心にアーティストに物件を紹介する不動産屋の女性とその友達で中学生の叔母のアーティストに対してお金を貸している借金取りの女性と自称アーティストたちが絡む物語でした。

芸術なんてなくても平気という借金取りの女を通じてアートって何っ?という問いかけがなされていて、彼女に本当のアーティストならちゃんと鳥のさえずりが聴こえるカナリア笛がもたらされる展開が楽しくて、笛を最初に美術部の奏介が鳴らすところはなんか泣けました。

奏介がいろんな作品を依頼されて製作し、大人から大金を渡される生々しさ。

そのお金を雑に管理する奏介の姿に安堵したりします。

先輩が仲良しの老婆を想ってやったことが大変なことになったりするくだりとか、不動産屋の恋人の芸術家が借金を踏み倒して逃げていたり、やたらお金が絡むのも芸術を考える上で現実的な目線をぶつけていて独特でした。

謎の野獣とか、野獣を撃退するオブジェとか細かいエピソードも楽しいです。

主人公の後輩がエスパーでお母さんにセクハラする爺ちゃんをやっつけるくだりはもはやアートがまったく関係なく横浜聡子ワールドに見えました。

キャスト的には最初に町にやってくる詐欺師カップルの女が唐田えりかで不動産屋の女が剛力彩芽で「極悪女王」のクラッシュギャルズの2人ががっつり共演していてびっくり。

いろんな楽しい要素が詰まっていますが、観るものに明確な答えを出さない映画なので一般受けは厳しいかも。