ヒロインの不幸さが度を超していてコメディみたいになっている「52ヘルツのクジラたち」 | キネマ画報

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名古屋在住映画好きダメ人間の映画愛をこめてのブログ多少脱線ありです。

「銀河鉄道の父」の成島出監督が町田そのこの同名ベストセラー小説を映画化したヒューマンドラマです。

 

自分の人生を家族に搾取されて生きてきた三島貴瑚はある痛みを抱えて東京から海辺の街の一軒家へ引っ越す。そこで母親から「ムシ」と呼ばれて虐待され声を発することのできない少年と出会う。貴瑚は少年との交流からかつて自分の声なきSOSに気づいて救い出してくれたアンさんとの日々を思い起こしていき…


とにかくヒロインが世の中のあらゆる不幸を引き受けているみたいに不幸が釣瓶打ちで、あまりにヒロインのまわりに不幸が集まり過ぎていて、もはやコメディみたいになっています。普段はさりげない演技がいい宮沢氷魚が絵に描いたような悪い男を大げさに演じさせられていて気の毒なレベル。

毒親、育児放棄、性同一性障害、DVなどなどいろんな問題を盛り込み過ぎた展開がもはやリアリティより展開のためにのみ機能していて、それぞれの問題に対して不誠実にしか思えなくて、感動とはほど遠い物語になっていました。毒親と家族の介護という青春時代は杉咲さんの前作「市子」と同じでびっくり。終盤のあんな堤防の近くにクジラが来ることがあったら、そのクジラは沖に戻れず死んじゃうのが普通だよなと思いました。随所にプレミアムモルツの宣伝が過ぎるのもなんだかなと思う。