「よろめき夫人」という流行語を生みだした美しい人妻が邪恋におぼれゆく姿を描いた三島由紀夫のベストセラー小説を「狂った果実」の中平康監督が映画化した1957年の作品です。
躾の厳しい育った節子は、親が決めた夫と息子がいた。結婚3年目頃から夜のいとなみも間遠になっていた節子は、ふと結婚前に唯一度キスしたことのある土屋を思い出し...
新藤兼人脚本で中平康監督だけあって映画としてはスタイリッシュに出来ていて、見栄えはいいですが原作者三島由紀夫は本作を観て「これ以上の愚劣な映画といふものは、ちよつと考へられない」と書いていたそうです。
シャワーシーンとか撮影も工夫を凝らしていて、夫以外の男に惹かれる人妻のよろめきを下品にならない感じに描いています。
月丘夢路演じるヒロインの育ちのいい感じはまさにはまり役で盲目のあんま役の西村晃はいつもの怪しさでいいスパイスになっています。
不倫ドラマと思ってみるとかなりマイルドな内容で拍子抜けしますが、当時としてはこれで十分刺激的だったのかも。
原作を読んでいないので何が三島由紀夫の不満だったのかわかりませんが、表面的にはけっこういい感じの作品なんではと思います。