「男はつらいよ」の山田洋次監督はいまだにずっこけで笑いがとれる凄い監督だ!「家族はつらいよ」 | キネマ画報

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「母と暮せば」が12月に公開されたばかりの山田洋次監督の新作が早くも公開です。

しかもキャストは「東京家族」のまんまなメンバー。

かつては「男はつらいよ」で日本の喜劇映画をリードしていた山田監督久しぶりの喜劇です。

商事会社を定年退職し隠居生活をする周造はある日、長年連れ添った妻富子から離婚を切り出される。夫と喧嘩して離婚すると騒いでいた成子は父からその話を聞かされ大慌て。

成子の夫泰蔵は富子が別れたがる理由は周造の女性問題なのではと睨み探偵に調査させる。

何も知らない次男の庄太は婚約者の憲子を家に連れてくるが、周造と富子の離婚問題の家族会議が始まり、富子の言い分を聞いて興奮した周造は倒れてしまい…

「東京家族」と家族構成は同じだけど、キャラクターの職業が変わっていたりしますが、脇役まで「東京家族」と同じ。居酒屋の女将の風吹ジュンとか探偵の沼田とか「東京家族」を観ていたら出てきただけで笑えます。

はじめは老人が主役で喜劇なんて出来るのかと思いますが、離婚を切り出されてからの周造のリミッターの外れ方が凄くて突然面白くなってきます。

娘夫婦に離婚しろと煽ったり、娘のことをあんなやかましいやつ自分だったら結婚しないと娘の夫に言ったりクソなじじいぶりが痛快。

そこに蒼井優扮する憲子が登場し、老夫婦にいい効果をもたらす展開は「東京家族」まんまだけど、今回の方が山田洋次ワールドが確立されていて、気持ちよく笑わされ泣かされます。

劇中に「東京家族」のポスターが登場したり、「男はつらいよ」のDVDが出てきたりしてなんでこんなにステマしまくりなのかと思うけど、最後は「東京物語」も登場し、原節子の紀子にあたる憲子が活躍する流れには原節子の追悼をしているように思えます。

いまどきやたら登場人物がずっこけたり、セリフの言い回しが古風で若い人にはとっつきにくいかもしれませんが、いい大人には身につまされる話で感情移入出来て気づけばお客さんはみんな声を出して笑って泣いていました。

いまどき登場人物がずっこけたりする映画なんてないけど、この映画ではくどいくらいずっこけシーンがあって、そのずっこけにお客さんが爆笑していることがすごい。
もうお客さんが笑う気満々になっていて、ずっこけはそのきっかけを与える記号な気がしてきます。
何が言いたいかというとそれ自体は大して面白くないずっこけでもお客さんを笑わせてしまう空気をそこまでに山田洋次監督が演出しているからこういう現象が起こるんだということ。

その空気作りあっての喜劇です。

寒いコメディは笑える空気作りをせず、ただ表面的なドタバタだけやっているから笑えないのかも。

いずれにしろ、今の時代にずっこけで笑いを取れる山田洋次はやっぱりすごいわ。