今観ると残酷シーンよりも意外に意識高い系な内容にびっくりする「食人族」 | キネマ画報

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名古屋在住映画好きダメ人間の映画愛をこめてのブログ多少脱線ありです。


「グリーン・インフェルノ」を観たのでどれくらい似ているのか確認したくて15年ぶりくらいに観直しました。

アマゾンの緑の地獄(グリーン・インフェルノ)と呼ばれる未開の地域を探検に行ったアメリカの4人の若者が消息を絶って4か月。

人類学者のモンロー教授は政府の要請により武装した男たちを従え現地へ調査に行く。

そこには若者の一人の持ち物だったライターを持った原住民ヤマモ族が。

ヤマモ族の青年をガイドに奥地へ進んだ教授は白骨死体を見つける。

さらに縛られた女が虐待され処刑されるところに遭遇。

ガイドを盾に部族に接した彼らは歓迎されるが、そこには4人の死体と彼らが撮影したフィルムがあった。

そのフィルムは「緑の地獄」というタイトルで放送されることに。そのフィルムを観た教授はそのおぞましい内容に放送を取りやめるように意見する。

そのフィルムの内容はアマゾンの原住民の部族間の抗争をデッチ上げようとするヤラセドキュメンタリー隊の極悪非道なふるまいと彼らが原住民たちに報復される一部始終だった。

1980年イタリア公開、日本では1983年、アメリカでは1984年に公開されたそうです。

1962年のヤコペッティの「世界残酷物語」の登場以降、ショックドキュメンタリーが世界中でヒットしました。そこらへんは生まれていないので知りませんが、はじめに「世界残酷物語」ありきです。

自分がリアルタイムで覚えているのはライオンに人が喰われる「グレートハンティング」や「食人族」公開と同じ1983年公開の車で男が腕を引きちぎられる場面が強烈な「カランバ」とか。

こういったショックドキュメンタリーの中にはヤラセ場面がけっこうあり、この「食人族」ではヤラセドキュメンタリー撮影隊の蛮行としっぺ返しが描かれていています。
さらにその様子が現場に残されていたフィルムによって明らかになるという仕掛けが当時の人々を真に受けさせ、監督が裁判にかけられたといういわくつきの作品です。

実際に亀とか猿とか殺して食べる場面も問題になりこれも裁判沙汰に。

映画に対して司法が動かされるほどの力がこの作品にはあります。

映画をちゃんと観れば、残酷場面がきっちりカット割りされ、本当なら危険で近寄れない場面で近くで撮影したクローズアップが挟まれていたりで劇映画とわかります。

また教授がいちいち彼らの行動を批判していたりいろいろ客観性も加味されているところがただの人食いホラーと違うところです。

残酷シーンが実にエグく描写されているところがかなり胸くそ悪くてたまらないです。

撮影隊の暴走ぶりが鬼畜すぎて、ホラー映画としてもっとヤレ!という気分で楽しめません。

この映画の手法は「ブレア・ウィッチ・ブロジェクト」(99)にも受け継がれ、現代でも通用することを証明しました。

イーライ・ロス監督の「グリーン・インフェルノ」はタイトルからして、この映画の舞台を指す言葉だし、いろんな場面がこの映画にオマージュを捧げられていました。エンドロールでは「食人族」のデオタード監督に捧ぐと出てきました。

「グリーン・インフェルノ」は残酷さで食い足りない感じがしましたが、「食人族」を観ると「グリーン・インフェルノ」は「食人族」ほどの不快感を与えず楽しめるレベルを模索した結果の食人族映画だったんだと納得。