
ボッカチオの「デカメロン」をパゾリーニが映画化した作品です。
原作の「デカメロン」はペストの恐怖から逃れるため、邸宅に集まった男3人、女7人が1人1話ずつ、10日間話し続けるという100話からなる物語集で「十日物語」とも言われています。
自分の子供の頃には大きなメロンパンの商品名であり、少年隊の歌にも「デカメロン伝説」とかありましたが、実際のデカメロンはアダルトなエンターテインメントでした。
映画はパゾリーニ監督が自ら演じる絵描きの狂言回しを挟み8つのエピソードが描かれます。
シシリアから馬を買いに来た男が妹を名乗る女に騙され糞尿まみれになり、金を奪われるが…
修道院に口が聞けない振りをして下働きをするようになった若者がシスターたちを虜にする話。
妻が不倫中に夫が帰ってきて、間男をかめの中に隠すが、夫はかめを買いたいという男をつれてきて…
散々悪事をしてきた男が最後についた嘘で手厚く葬られる話。
若い娘が貴族の息子に夜這いされ、娘の父がその男にあることを命じる話。
妹が使用人と夜を共にしたのを見た兄は三兄弟で使用人を森に連れ出し…
ドン・ジャンニが弾みで侍従の夫婦に魔法が使えると言ったら、真に受けられたので…
死後の世界が気になる男たちが先に死んだ方が枕元に立ち死後の世界がどんなものなのか伝えようと約束。
弟の妻と不倫しまくっていた男が先に死に、約束通り死後の世界を語りに現れ…
暗い話は妹と使用人の仲を知った三兄弟の話くらいで後は基本コメディで大半はエロチックな笑い話です。
高校生のとき、深夜に試験勉強しながらたまたまつけていたテレビでこの映画がやっていて、衝撃を受けました。
世の中にこんな牧歌的なエロ映画があるのかと。
特にドン・ジャンニのエピソードの素朴さは民話並みでここにエロが入るのか!とびっくり。唐突な終わり方もすごくて忘れられない映画体験となりました。
新聞のラテ欄で映画のタイトルが「デカメロン」と知り、とりあえず原作を読みました。
教科書の年表に載るような古典の名作がこんなにも他愛ない馬鹿話の寄せ集めであることを知り、また衝撃を受けました。
出演もしている監督のパゾリーニが「ソドムの市」のようなエログロの極みみたいな映画を作っていたことにも衝撃を受けました。
昔、レーザーディスクでこの「デカメロン」を買いようやく原語で観ました。
やっぱりめちゃめちゃ面白かった。
今見るとロケ地のリアリティや衣装やヘアメイクの美しさにまた衝撃を受けました。
宮崎駿のアニメなみの世界が構築されていて、映像的な魅力も再発見しました。
衣装がファンタジーやSF映画なみに美しくて惚れ惚れします。
それでいて裸で横たわる太った女性の姿はルネサンス期の絵画のような完璧な構図だったりします。
人間が人間らしく当たり前のシーンですら退屈しません。
ただ丁寧にいれられているボカシはやっぱり不粋です。ノーモザイクで観たい作品です。
たぶん若い人たちはパゾリーニと聞いてもピンとこないだろうけど、今観ても新鮮な驚きがいっぱいで、人間のプリミティブな欲望をストレートに映像化したパゾリーニのその勇気に感服しました。
是非若い人に観てもらって名作だって小難しい退屈なものだけじゃないと知ってほしいです。