ルイス・ブニュエルの「昼顔」は、旦那に隠れて昼間だけ娼館で働く人妻の話。
シュールリアリズムの作家だったブニュエルらしく、ときおり入る幻想的なシーンが強烈で、中学生の頃に初めて観たときはストーリーがよくわからなかった。
しかし、大人になって見返すと大いに理解できた。
カトリーヌ・ドヌーブ演じる人妻娼婦にハマってしまう悪党の男は、ななちゃんに溺れていくボクそのものだった。
「昼顔」になぞらえていうなら、オープンからお店に来ているななちゃんは「朝顔」だった。
ボクは夜勤明けの真っ昼間からななちゃんに会いに行く。
客の少ない昼間はサービス料金で安かったし、予約なしでも彼女を指名出来た。
普通の大人が額に汗して働くか、デスクで真剣な顔をしている時間に、ボクとななちゃんは、ふたりだけの桃源郷にいた。
実際の空間はうらぶれたフーゾクの狭いプレイルームだったが、暗くすればそんなことは気にならなくなる。
会えば目的はひとつで、1時間にどれだけお互いが気持ちいいことをできるかだけだった。
実際、声に出して相談しながらやるわけではない。
ただただ気持ちを行動に置き換えてぶつけあう。
その中で女性は男性より短いスパンで絶頂を体験できるということを初めて知った。
しかも、挿入なしで。
体が合えば心も開けるようになった。
プレイの後は、ななちゃんとプライベートな話もした。
ボクは自分の仕事や収入の話をしたし、彼女は家族の話をした。
その家族に普通のお勤めをしていると思わせる為、午前中に出勤して夕方には帰宅していること
両親は離婚していて、妹は結婚して新たな家族と生活していること
ななちゃんは、母親と二人暮しなこと
ななちゃんがボクの5歳年上なこと。
少し年上の
大人の女性
でもかわいい人
初めて会ったときの強烈に凝視された意味を知るのは、もう少し先のことだった。