1Q84 | 前立腺がん闘病封じ込め記

前立腺がん闘病封じ込め記

前立腺がんの診断を2020年1月に受けた。PSA値640超、Gスコア8、多発的骨転移ありだった。手術・放射線は適応にならない。それでもあわてない、あせらない、あきらめない日々を送る。

村上春樹さんの長編小説「1Q84」を読んだ。


読み始めてから読み終わるまで4週間ほどかかった。普段の読書速度からするとスローな読み方だ。自分としては、珍しく斜め読みや読み飛ばしができない小説だった。


結構注意深く読んだ。現実の世界とそれに近い別の世界に迷い込んでしまった主人公たちの不思議な体験の物語だが、作者の意図や思いを探りながら読んだ。


登場人物の、青豆、天吾、老婦人、タマル、小松、牛河、ふかえり、戎野先生、天吾の父、教団のリーダー、坊主頭、ポニーテール、中野あゆみ、施設の看護師たち、


結構長期間物語世界に浸っていると、彼らが何か友人や家族であるかのような身近な存在に感じられた。


キーワードの、空気さなぎ、二つの月、リトルピープル、マザとドウタ、


これらの暗示するものは、作者が別のいくつかの作品の中でもよく用いられるパターンかもしれない。すなわち、圧迫や迫害を形成する主体者と、そこから何らかの被害を受ける者、作者は往々にして後者の立場の側に立って、その説明しがたい苦悩や歪んでしまった心の処理の過程を表現する。


村上春樹さんの長編小説はファンタジーの世界の中に現実の矛盾や残酷さをうまく表していて読み応えがある。


1Q84は800万部以上の大ベストセラーで、世界中の読者に読まれているという。人気は単なるブームのようなものでなく、こうして発刊後何年も経って読んでみても、作者のストーリーテリングの巧妙さと表現の丁寧さと思想的な充実さを持っていると感じるのだ。