西宮で観る至高の美術 和泉市久保惣記念美術館展 (西宮市大谷記念美術館) | れぽれろのブログ

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6月25日の土曜日、兵庫県西宮市にある大谷記念美術館に行ってきました。
西宮市大谷記念美術館は、昭和電極株式会社(現SECカーボン株式会社)のオーナーから、西宮市が土地と建物を譲り受けてできた美術館です。1972年開館ですので、今年はちょうど会館50周年になります。自分は意外とこの美術館に訪れたことはなく、今回が初の訪問です。最寄り駅は阪神香露園駅、駅から比較的近いので訪れやすく、大阪方面からも神戸方面からも手ごろな距離の場所にあります。

この日(6月25日)はお昼は暑かったですが、お昼過ぎから雨が降り、雨が上がった夕方からは少し気温が下がりました。予報では降水確率は30%程度でしたが、香露園駅を降りると雨が降っています。出発時は雨が降る雰囲気はなかったですが、念のため折り畳み傘を持って行って正解、濡れずに美術館を訪れることができました。


外観はこんな感じ。

元々は昭和電極の社長が所有していた建物だそうですが、案内によると1991年に増改築とありますので、以前は違った建物だったのかもしれません。


今回鑑賞する展示はこちらです。

「西宮で観る至高の美術 和泉市久保惣記念美術館展」と題された展示です。歌川国芳の有名な浮世絵作品「相馬の古内裏」の巨大なガイコツが遠くからでも目立ちます。
 

今回は前半でこの展示の覚書と感想を書き、後半に大谷記念美術館の庭園の様子をまとめておきたいと思います。


まずは特集展示です。
この日は和泉市久保惣記念美術館の名品展が開催されていました。
和泉市久保惣記念美術館は大阪府和泉市にある美術館です。この美術館は大阪府なので、訪れやすい美術館と思われるかもしれませんが、さにあらず。和泉市の山側にある美術館で、電車で行くなら泉北高速鉄道の終着駅である和泉中央駅を降りて、さらにバスに乗る必要があります。車なら阪和道で岸和田和泉ICを降りるか、もしくは外環状線で訪れるかという、なかなか面倒な場所にある美術館です。
大谷記念美術館は西宮市の街中にあり、駅から歩いても近いので、大阪府民であっても多くの人はきっとこちらの方が訪れやすいはずです。

展示は4部構成、第1部は古代中国の青銅器、第2部は明代以降の中国絵画、第3部は近世の日本絵画、第4部は浮世絵となっていました。

第1部は古代中国の青銅器の展示です。この展示が最も面白かったように思います。
殷周時代の古いものから春秋戦国時代あたりの古代中国のものが中心でしたが、漢代、隋唐時代を経て、新しいものは元の時代のものもありました。
展示は大きく4つに分かれており、器類(鼎など)、帯鉤(ベルトの装飾)、仏像、銅鏡の順に鑑賞。全体的に殷周時代の青銅器は装飾がゴテゴテしており、銅錆の緑色が強く、独特の迫力のあるものが多いです。漢代、唐代になるに従って装飾は落ち着いたものなり、保存状態が良いものが多いからかオール緑色のものは少なく、登場する動植物や神獣の類も写実性が勝るようになります。
個人的に最も面白かったのが銅鏡の展示で、戦国時代のものもありますが、中心となるのは漢代と唐代。銅鏡の裏面に施される細かい装飾は観察するのが楽しく、とくに東西南北を示す青龍、白虎、朱雀、玄武の4体の装飾が魅力的ですが、何を表しているのか分からない謎の生き物の装飾もあって面白いです。
仏像は展示数は少なく手のひらサイズの小さいものが中心、魏晋南北朝~唐代のものを見ることができました。法隆寺の百済観音にそっくりの体躯のものがあったりと、日本の仏像の大陸からの影響も考えることのできる展示になっています。

今回の青銅器の展示で最も良かった点は、小型のペンライトの貸し出しがあった点です。このペンライトの光を作品に当てることにより、細部の装飾を明るい光によってしっかりと観察することができます。一般に美術館では、作品保護の観点から展示室は暗くなりがちで、せっかくの展示でも細部の装飾が分からないことも多いですが、今回のライト貸し出しの趣向はたいへん良かったように思います。この展示で青銅器が一番面白いと感じたのは、おそらくこのライト貸し出しの効果が大きいです。このような展示方法はもっと広まると嬉しいですね。
その他、銅鏡や帯鉤の展示はガラスケースと展示品の距離も近く(ケースの深さが浅い)、至近距離で観察できるのもたいへん良かったです。ガラスケースの形状も意外と重要。

第2部~第4部は絵画作品です。
第2部は中国絵画。近世日本で言うところの文人画(南画)に近いような縦長の山水画が多かったです。日本の文人画と中国の同様の絵画作品を比較した場合、中国の作品の方が全体的に落ち着いており、静謐な雰囲気の作品が多いです。中国の作品を見ると、近世日本画の大胆さとアヴァンギャルドさが逆によく分かります。
第3部は近世の日本絵画で、このパートではとくに円山応挙の動物画が貴重です。一般に近世日本画というと装飾やデフォルメが強いイメージがありますが、応挙の動物画はさにあらず。ウサギやサルや昆虫などかなり写実的で、しっかりと動物を観察しながら描いていることが見て取れます。どことなくドイツの画家デューラーの動物の写生画が思い出されたりもするのも面白い点。
狩野寛信の「古画写図貼交屏風」も意外と面白い。いかにも狩野派的な、粉本をそのままトレースして並べたような作品に見えますが、いろんなモティーフを屏風一面にカット&ペーストしたようなものを観察することそれ自体は楽しく、眺めていると時間が経ってしまいます。
最後の第4部は近世浮世絵。目玉は歌川国芳の「相馬の古内裏」ですが、葛飾北斎の「春興五十三駄之内」と、歌川広重の「東海道五十三次図会」の連作も楽しい。江戸日本橋から京都までの各宿場町を、北斎は風景中心、広重は名産品を中心に描いた浮世絵は、のんびり見ているだけで楽しくなります。

ということで楽しく鑑賞しました。
久保惣美術館といえば宮本武蔵の「枯木鳴鵙図」が有名だと思いますが、残念ながらこちらの展示はなし。有名作品はやはり和泉市の方を訪れて鑑賞する必要があるようですね。


さて、夕方からは大谷美術館の庭園を散策。良い雰囲気の庭園で、雨が上がって気温も少し下がり、のんびりと散策することができました。


庭園の池の様子。



良い雰囲気ですね。


細い道をたどって歩いていきます。





こちらは大谷竹次郎の胸像。

元昭和電極の社長。この美術館の所蔵作品の、元々のコレクターです。


ちょうどアジサイの季節です。



雨粒が光る様子もまた良いですね。


違うお花も。



これは梅の実でしょうか?

その昔「ひらけポンキッキ」で流れていた「うめぼしのうた」では、「5月6月実がなれば、枝から取られて籠の中」と歌われていましたので、6月は梅の実がなる季節のようです。(でもこれが梅の実なのかは確信がない…。)


青紅葉も良い雰囲気です。



庭園から美術館併設の喫茶店を撮影した図。



石灯籠もあります。



突如現れる大谷夫妻の像。

森の中からにゅっと現れるので、一瞬怖いです 笑。


お子様の像も。

ウサギを抱いています。


足元にもウサギがいました。



かと思うと謎の像(?)も登場。

一瞬関西テレビのキャラ、ハチエモンを思い出しました 笑。


ということで、西宮市大谷記念美術館の展示の覚書と庭園の様子でした。