世紀末前後 モーニング娘とその周辺 | れぽれろのブログ

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前回の記事で、過去1年間の自ブログの文章を解析したところ、「音楽」と「政治」の関わりが異様に強いという結果になりました。政治と音楽は元来関わりやすいものですが、そればかり書くのもどうかと思いますので、今回はまったく非政治的な音楽の記事を書きます。

ということで、モーニング娘です 笑。
モーニング娘は1997年に結成されたいわゆるアイドルグループで、メンバーを変えながら現在も活動を続けているようです。
一般に90年代はアイドル冬の時代などと言われ、目立ったアイドルがいないとされている時代です。評論家の中森明夫さんによると、アイドルの歴史は1971年デビューの南沙織に始まるのだそうです。その後70年代から80年代にかけて様々なアイドルがデビューしましたが、90年代には目立ったメジャーなアイドルはおらず(例えば安室奈美恵などは一部アイドル的な扱いもされていたように思いますが、一般にはアイドルとは言われない)、90年代に中高大学を過ごした自分も、アイドルとはほぼ無縁の生活で、日常でアイドルが話題になることもまずありませんでした。
そんな状況ですので、1998年にシングル「モーニングコーヒー」でモーニング娘がメジャーデビューした際にも、自分の周りも含めアイドルと思って聴いているという感じはなく、モーニング娘はJPOPの1ミュージシャンとして消費されていたような記憶です。しかし、詳しい向きによると当時から「これは80年代のおニャン子クラブの再現である」と言われていましたし、その後のゼロ年代から10年代にかけてアイドルは再興し、とくにAKBとその周辺グループの圧倒的人気により10年代は再びアイドルの時代となりますが、その1つの大きなきっかけがモーニング娘のデビューと成功であったのは間違いなく、大げさに言えばモーニング娘は「日本のアイドル中興の祖」と位置付けることもできるのではないかと思います。

当時、モーニング娘の周辺では、そのメンバーを中心とした派生ユニットもたくさん結成されていました。今回はモーニング娘及びその周辺の派生ユニットの楽曲から5曲を取り上げ、並べてコメントしてみたいと思います。
作詞作曲はすべて元シャ乱Qのつんくです。これらのユニットの面白さは、何といってもつんくの楽曲の面白さにあります。
いずれも1999年~2001年にかけて、ちょうど世紀の変わり目前後に発表された楽曲です。それぞれ当時の音楽シーンではかなり衝撃的に受け取られた楽曲で、これらの曲を聴くと自分を当時のことを懐かしく思い出します。



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・LOVEマシーン/モーニング娘 (1999)

 


まずは超有名楽曲、「LOVEマシーン」です。
モーニング娘は98年のメジャーデビューの「モーニングコーヒー」以降、「サマーナイトタウン」、「抱いてHOLD ON ME」とヒットが続きますが、99年にはちょっと音楽シーンでは下火になってきた印象がありました。そんな中、99年の秋に満を持して登場したこの「LOVEマシーン」はかなり衝撃的でした。
これまでの楽曲とは一線を画すダンスミュージック、白いモフモフの付いた巨大なガウンを着て、音楽番組で派手に踊りまくるメンバーたちの姿はかなりの衝撃。今でもこの曲はおそらく有名だと思いますが、当時のびっくり感はなかなかのものでした。このPVでも激しいダンスの片鱗をうかがうことができます。

一般にAメロ→Bメロ→サビと、だんだんキャッチーになっていくのがつんくの楽曲の大きな特徴ですが、この曲も例外ではなく、やや音程が取りにくい短調のAメロからメロディが強いBメロに移行し、サビで長調に転調してはっちゃけるという構成が楽しい。
「バディバディバディ」の部分の激しい振付、「みだら」「あらわ」の感情たっぷりの歌唱や、「All of the night!」後半の絶叫など、演出効果もたっぷりの楽曲。唐突に登場する「日本(にっぽん)」や、自グループが歌詞に登場する部分(「モーニング娘も」の部分)も印象的。
99年後半の日本は、97年~98年の平成不況の最悪の状況から少し離陸し始めた時期で、「日本の未来は世界が羨む」というのは当時の世相ともややマッチしていたのではいかと思います。



・ちょこっとLOVE/プッチモニ (1999)

 


プッチモニはモーニング娘の派生ユニットで、3名ともモーニング娘のメンバー。この曲は「LOVEマシーン」のすぐ後に発売されており、PVのつくりもどことなく似ています。
当時自分は大学生で、大学の研究室のプロジェクターの実験か何かで、この「ちょこっとLOVE」と椎名林檎の「本能」のPVがなぜか延々研究室で再生されていました。そんな訳で実は自分はこのPVは嫌になるほど見ています 笑。

やや歌いにくいAメロから、Bメロを経てキャッチーなサビに移行するという楽曲のパターンは、「LOVEマシーン」と共通。しかしこちらは転調はなくずっと長調で、アップテンポな明るさが楽しい楽曲。初回の衝撃度では「LOVEマシーン」が上回りますが、個人的にはこの「ちょこっとLOVE」の方が楽曲的には好みです。
1番では恋愛が、2番では家族愛が歌われ、LOVEの意味に「LOVEマシーン」のような官能性はなく、もっと明るい感じがします。歌詞では、「ですね、ですね、ですねですねですね」、「すき、すき、すきすきすき」、「まる、まる、まるまるまる」の部分が、やはり印象効果抜群です。

ちなみにこの3人の真ん中にいる市井紗耶香さんは、2019年の参院選で立憲民主党の比例区から出馬し、落選しています。「ちょこっとLOVE」から20年、立候補は当時自分はびっくりしましたが、彼女は結局比例区の票集めのためのみに使われた印象で、比例上位の年長議員を当選させるだけの結果になりました。比例区の優先順位問題は今回の衆院選の辻元清美さんの落選にもつながる問題で、立憲民主党は誰の方を向いて政治を行っているのかという疑念にもつながる問題だと感じます。(と、結局すぐまた政治につながってしまうのが当ブログの残念なところ 笑。)



・乙女 パスタに感動/タンポポ (2000)

 


続いてはまた別の派生ユニット、タンポポの2000年の楽曲です。
まずこの曲はタイトルのインパクトがすごい 笑。当時「なんやこのタイトルは」と仰天したものですが、現在の若い人の感覚からすると、これがどう感じられるのかも興味深いところ。
発表当時の音楽レビューでは、ギターがブライアン・メイで、全体のイメージは「キラー・クイーン」などと紹介されており、聴いてみるとなるほどそのように聴こえなくもないなと思った記憶があります。

歌詞はよくあるタイプの一週間ソングで、週明けから週末にかけて気持ちが盛り上がっていく恋愛ソング。やはりAメロ→Bメロ→サビとどんどんメロディがキャッチーになっていく構造は同じ。
とくにこの曲はサビがよくて、金・土・日の寂しさと楽しさが印象付けられます。「土曜日、明日になれば」の部分のメロディとコードが、その直前のギターの盛り上げと合わせてとくにいい感じですね。
Aメロの歌詞の末尾2文字を意味なく繰り返す歌唱もまた良し。間奏のギターは確かにクイーンのブライアン・メイ風にも聴こえ、サビ裏の三連符で動くハープシコードも楽しく、挿入されるコーラスも好みです。
タイトルのパンチはともかく(笑)、メロディから楽曲まで、全体的に世紀末前後のモーニング娘とその周辺の楽曲の中では、個人的に最も好きな楽曲です。



・ミニモニ。テレフォン!!リンリンリン/ミニモニ (2000)

 


こちらはまた別の派生ユニット、ミニモニからの1曲。
ミニモニは主に小学生などの低年齢層をターゲットにした(と思われる)ユニットで、当時子供向け番組とよくタイアップしており、楽曲も子供を意識したものになっていた記憶です。
ミニモニはデビュー曲の「ジャンケンぴょん!」がとにかく衝撃的で、「なんやこの曲は」と驚いた(とくに「自分を信じていくのだぴょーん♪」のアラビア風音階の部分など 笑)ものですが、今回はセカンドシングルの方を取り上げます。

メンデルスゾーンの結婚行進曲風にスタートしますが、すぐにAメロが登場。
この楽曲はとにかくAメロ「ミニモニテレフォンだリンリンリン」のメロディが耳に残ります。オクターブで跳躍上昇した後下降音型になりますが、後半が半音階進行で最後が上主音で終わるやや複雑なメロディは、果たして子供が歌えるのかと当時思ったものです 笑。Bメロからサビにかけては割と普通で歌いやすいものですが、このAメロが面白くて印象に残っている楽曲です。
歌詞は電話についての内容で、この2000年当時はちょうど折りたたみ式の携帯電話(パカパカ電話)が普及したころ、携帯にカメラ機能が付属し始めたのもこのころです。今でこそスマホにカメラは当たり前ですが、電話とカメラが同時に歌われるのが新しいという感覚は、当時ならではのもののように思います。



・おっととっと夏だぜ!/EE JUMP (2001)

 


最後はEE JUMPというユニットの2001年の楽曲。
このユニットは男性ボーカルがモーニング娘のメンバーの弟という点を除いて、直接モーニング娘のメンバーとは関係ありませんが、作詞作曲はやはりつんくで、当時は同じような音楽カテゴリの中で消費されていたと記憶しています。
上に散々「当時は衝撃的だった」ということをあれこれ書きましたが、この曲はそれに輪をかけて衝撃的で、かなりハチャメチャ感があり、つんくのこの時期の楽曲の中でもたいへん楽しいものになっているように思います。

静かな前奏のあとのAメロはラップで始まり、部分的に関西弁が挿入される。Bメロは一転して短調の歌いやすいメロディになり、Bメロの最後で一旦感傷的にフェードアウト。そしてハイテンションでキャッチーなサビにつながっていき、サビの最後は一気にオペラ風の声楽的な歌唱になり、頂点に達するという非常に楽しい楽曲です。間奏部分にはサンバも登場します。ラップ、ポップス、サンバ、声楽と目まぐるしく表情が変わり、眩暈がするような楽曲になっています 笑。
個人的にはBメロの最後、「うどんが辛い」、「パンダがいない」という、関西人の東京に関する印象が挿入されるのも面白ポイント。薄味の関西人にとって東京のうどんは塩辛く、また神戸の王子動物園や白浜のアドベンチャーワールドで普通にパンダが見れる関西と違い、東京では当時はパンダがいなかったものと思われます。作詞作曲のつんくもボーカルのソニンも関西・西日本出身のため、このような歌詞になっているのかもしれません。