近畿の風景シリーズ。
今回は兵庫県神戸市・芦屋市ににある洋風建築を取り上げたいと思います。
現在の神戸近辺は近世以前からの港町であり、大輪田の泊、兵庫の津などは中世・近世の日本史にも登場する港です。明治の近代化以降、神戸は西日本の中でも重要な港となり、その結果神戸近辺は多くの外国人が住むようになりました。このため、神戸周辺にはかつて外国人関係者が住んでいた洋風建築や、外国人設計者による洋風建築などが多く残されています。
今回はその中から、三宮の北側にある北野異人館街、芦屋の北側にあるヨドコウ迎賓館を中心に、いくつかの洋風建築を取り上げたいと思います。
訪問は昨年の秋から冬にかけてですので、約1年前の写真になります。
(1)北野異人館街
まずは北野異人館街です。
神戸は北側が山、南側が海に面しており、山と海に囲まれた都市です。神戸の三宮駅から北側(山側)に向かって歩くと北野町という地域になり、この近辺には多くの洋風建築が残されています。現在は観光地となっており、これら洋風建築の内装を公開したり、建築を利用して展示などが行われている地域になります。
たくさんの建物があるため、すべて見て回ろうとすると1日では難しいです。今回はたくさんの建築の中から5つをピックアップして写真とコメントなどを残しておきたいと思います。
三宮駅から北に歩くと徐々に上り坂になっていきます。
駅前から路線バスが出ているのでバスで行くこともできますが、自分は歩いて向かいました。歩くと神戸の南北の高低差を体感することができます。
北野異人館街の入り口付近。
様々な洋風建築が見えてきます。街灯も昔のヨーロッパ風で、景観がおしゃれです。
さらに山側に向かうと狭い道が現れます。
この空間の中に、有名なものだけでも15軒ほどの建築が残されています。
・オランダ館
まずはオランダ館です。
元々オランダの総領事館であった建物です。その後長らく個人宅として利用されていましたが、近年観光場所として公開されるようになりました。
受付の方もオランダ風の衣装を身に付けられていました。
内装の様子。
メイドの寝室。
キッチン。
フェルメールの絵画に登場しそうな写真が撮れます。良い雰囲気ですね。
寝室。
リビングにはピアノもあります。
有名なピアニスト、フジコ・ヘミングも訪れたことがあるのだそうです。ピアノを弾く写真が残されていました。
この他、オランダ出身の画家であるゴッホをテーマにした絵本なども展示されていました。
あと、館内ではなぜかずっとモーツァルトの交響曲35番「ハフナー」が流れていました。モーツァルトはオーストリア出身、オランダ関係ないやんと思わずツッコミ 笑。
・ウィーン・オーストリアの家
こちらが本物の?オーストリアです。
館内ではオーストリアの文化が紹介されており、ウィーン・ハプスブルク家とモーツァルトを中心とした展示になっていました。とくにモーツァルトは、その生涯を紹介する割と力の入った展示になっていましたので、モーツァルト好きの方にはおすすめです。
ベートーヴェンの胸像。
(展示部分は撮影不可なので、写真は少なめです。)
・デンマーク館
続いてはデンマーク館です。
(こちらも展示中心なので写真はこれだけです。)
デンマークの民族衣装の顔出しパネルがお出迎え。
デンマークの文化を紹介する展示で、とくに重視されているのがバイキングとアンデルセンでした。この館の展示はかなり充実していて面白かったです。
10世紀前後はバイキングの時代、デンマークを中心とする北ヨーロッパの北方ゲルマン人は、この時期にヨーロッパ各地に進出し、各地の王国に大きな影響を与えました。
巨大なバイキングの舟の展示などが印象ですが、個人的には有名なバイユーのタペストリー(刺繍画)を面白く鑑賞しました。(写真展示だったか複製展示だったかは、ちょっと記憶が曖昧です 笑。)
あとはデンマークの有名童話作家アンデルセンの展示が印象的です。とくに「すずの兵隊」が多く取り上げられていたのが面白かったです。アンデルセンは「マッチ売りの少女」「みにくいアヒルの子」「人魚姫」などが有名ですが、個人的に好きな「すずの兵隊」がプッシュされていたのは好感度が高いです。
・うろこの家
こちらは神戸異人館街の中でもかなり有名な建物、うろこの家です。
旧ハリヤー邸と言われる建物ですが、外装のタイルがウロコ状になっているため、現在は一般的に「うろこの家」と呼ばれています。
元々は外国人向けの借家であったようですが、その後ドイツ人のハリヤー氏の住居となり、現在は観光地となっています。北野異人館街の中でもかなり高い位置にあるため、訪れるにはそれなりに坂を上る必要があります。
館の前にあったイノシシの像。
この鼻をなでると良いことがあるという言い伝えがあるそうです。観光客がなでまくるためか、鼻の部分が変色しています 笑。
人魚の像もあります。
なぜか現れる仏頭。
日本・東アジア風ではなく、おそらくもう少し西域風の仏頭ですね。
内装も良い雰囲気です。
館内では絵画や工芸などの展示も行われていました。
とくに印象的なのはロイヤルコペンハーゲンやマイセンの陶磁器で、中でもマイセンのロココ風の人形の展示が面白かったです。
うろこの家からみる神戸の風景。
中央奥に小さく神戸ポートタワーが見えます。
・山手八番館
最後は山手八番館です。サンセンという方の住居であったため、旧サンセン邸とも言われます。
入り口では邪鬼による灯篭がお出迎え。
建築は洋風ですが、彫像は和風です。館内では様々な彫刻作品が展示されていましたが、和風・アジア風・アフリカ風のものが目を引きました。
内装の一部。
こんな感じの洋風の部屋ですが、照明下部の装飾がエジプト風です。
山手八番館で面白かったのは、イギリスの風刺画家ウィリアム・ホガースの版画作品が展示されていたことです。個人的にホガースは好きな画家ですので、興味深く鑑賞しました。
その他、北野異人館街付近のスターバックスカフェ。
北野異人館街ではスタバもおしゃれな外装になっていました。
(2)ヨドコウ迎賓館
続いては芦屋市のヨドコウ迎賓館です。
最寄り駅は阪急芦屋川駅。駅から北に向かって上り坂をしばらく歩くとヨドコウ迎賓館が見えてきます。実はヨドコウ迎賓館は自分は4年前に一度訪れているのですが、このときは改修中で中に入れませんでした 笑。昨年秋は開館していたため、内装を含め見学することができました。
門をくぐった中の様子。
外観。
縦に長い建築であり、坂の高低差を利用した狭い場所に建てられていますので、全体を撮影することは難しいです。
坂の下の方から撮影した写真。
ベランダから上階部分を撮影した写真。
外部の装飾はいわゆる一般的な洋風建築という感じではなく、一部は南北アメリカかアフリカあたりをイメージさせる装飾になっています。
ヨドコウ迎賓館はアメリカの有名建築家フランク・ロイド・ライトが設計したと言われる建物です。
竣工は1924年、元々は個人宅でしたが戦後はヨドコウ(淀川製鋼)が買い取り、一時は社長宅として使用されていたのだそうです。現在は一般公開されており、観光地の1つとなっています。
内装の様子。
こちらは来客スペースでしょうか。
六角形の椅子が印象的です。
窓の装飾も面白い形。
食事スペース。
こんな風に扉に向かって垂直に撮影すると、やはりフェルメールの絵画風に見えてきます 笑。
廊下も良い雰囲気です。
暖炉。
和室もあります。
畳の部屋ですが、欄間の装飾は和風ではないのも面白ポイント。
床の間風のスペースも。
ベランダから撮影した芦屋の町の様子。
南に向かって撮影しています。
真ん中を流れるのが芦屋川、中央に見えるのが阪急芦屋川駅、奥には阪神高速と海が見えます。
遠目に見る芦屋浜のマンション群。
こちらは北側、山の方にも斜面に沿って住宅地が広がっています。
こんな感じの風景が一望できる、見晴らしの良い場所に建てられています。日々ベランダに出て芦屋を一望できるというのは心地よさそうですね。
(3)その他
おまけ。他数件の建築の写真です。
こちらは兵庫県公館。
阪神・JR元町駅付近、もしくは地下鉄県庁前付近にあります。
1902年に建てられた県庁舎ですが、現在は県庁は別の場所にあり、こちらの建物は今は迎賓館として使用されているそうです。良い感じの外観で、絵になる建物ですね。
こちらは相楽園の中にある建築、旧ハッサム邸。
相楽園は兵庫県公館の北側にある日本庭園ですが、庭園の中になぜか洋風建築が残されています。
庭園の中に和室があるのはよくあるパターンですが、洋風建築が存在するのが神戸らしい気がします。阪神大震災で被害を受けた遺構なども一部残されています。
その横にあった馬小屋。
驚くなかれ、こちらの大きな洋風建築はなんと馬小屋です。ずいぶん立派な馬小屋ですね 笑。
おしゃれな装飾が馬小屋の外装にも残されているのが面白いですね。
相楽園も面白い庭園でした。また別の機会に相楽園も取り上げたいと思っています。