満喫!楽聖ベートーヴェン | れぽれろのブログ

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11日の祝日の土曜日、いずみシンフォニエッタ大阪の第38回定期演奏会を鑑賞しに、大阪城そばのいずみホールに行ってきました。
年に2回、猛暑の夏と極寒の冬に開催されるいずみシンフォニエッタの演奏会。
先週の暖かさはどこへやら、この日も震えながらいずみホールに向かいました。

今回の演奏会のタイトルは「満喫!楽聖ベートーヴェン」となっています。
現代音楽を演奏する楽団が、まさかのベートーヴェンのプログラム。
今回の曲目は以下となっています。

・ベートーヴェン・シンフォニー/シュネーベル
・大フーガ 変ロ長調 op.133 (弦楽合奏版)
・ベートーヴェンの8つの交響曲による小交響曲/西村朗
・ピアノ協奏曲第5番「皇帝」op.73(いずみシンフォニエッタ大阪版)

1曲めと3曲めはベートーヴェンの楽曲を大胆にアレンジした現代音楽で、いすみシンフォニエッタ大阪らしい選曲ですが、2曲めと4曲めは意外なことにほぼベートーヴェンの楽曲そのものです。
ただし本来弦楽四重奏である大フーガは弦楽合奏版に編曲され、ピアノ協奏曲5番は室内管弦楽向けに編曲されています。
2曲めと4曲めの編曲者は毎度お馴染みの川島素晴さん。
指揮者はこれまたお馴染みの飯森範親さん。


現代音楽という観点から見ると、本プログラムのメインはやはり1曲めと3曲めということになります。
1曲めのシュネーベルの「ベートーヴェン・シンフォニー」は、ベートーヴェンの交響曲第5番の1楽章を大胆に改変した作品。
5番1楽章の流れはそのままで、リズムと響きを大きく変更している楽曲でした。
原曲は「ジャジャジャジャーン」というパターンがしつこく繰り返されるため、どうしてもリズムの方に耳がとらわれがち。
シュネーベルの楽曲はこのリズムを排することにより、旋律と響きのみが浮かび上がる形で聴こえてきます。
これが意外と心地よく、ある種の攻撃的なリズムパターンをなくすと綺麗な音構造が見えてくる、という感じで面白かったです。

妙な打楽器のパフォーマンスが入るのも、このシュネーベルの作品の特徴。
紙をくしゃくしゃにするような音を出したり(これが意外とやかましく耳につきます。ベートーヴェンが楽譜をくしゃくしゃにして破り捨てるようなイメージでしょうか。)、ペットボトルをつぶすような変な音、さらにシュトラウスのアルプス交響曲で有名な(?)サンダーマシーンも登場。
再現部は提示部にはなかったリズムが登場。
この打楽器群とリズム感と音色が、現代的で不思議な響きを醸し出す、面白い楽曲でした。


3曲めはいずみシンフォニエッタ大阪の音楽監督でもある西村朗さんの「ベートーヴェンの8つの交響曲による小交響曲」。
これが非常に面白かったです。
ベートーヴェンの交響曲第1番から第8番までの様々な主題を混ぜ込み、圧縮した4楽章制の交響曲です。
短い楽曲(11分くらい)ですが、これがなかなか密度の濃い作品でした。
この楽曲はベートーヴェンの交響曲第9番を演奏する際、その前座として演奏されることを目的として作曲された曲なのだとか。
第九に至るベートーヴェンの8曲の交響曲を、ダイジェストで振り返ることのできる作品。
しかし単純に旋律を抜粋して並べるのではなく、もっと現代的な響きが楽しめる曲になっていました。

全4楽章制で、1楽章には1番から8番までの1楽章の主題が登場、2楽章には同じく1番から8番の2楽章の主題が登場、という形で進んでいきます。
3楽章と4楽章も同じ趣向ですが、4楽章は6番のみ4楽章と5楽章の主題が両方登場します。
ベートーヴェンなので主題は古典・ロマン派風ですが、原曲にはないスネアドラム、シロフォン、鐘などの打楽器も入るため、響きはあくまで現代的。
1楽章は1番から始まっていろんな主題が登場しますが、7番の部分だけリズムが特徴的なためか、突発感を感じます。
2楽章は緩徐楽章の中では異質な8番に始まり、6番の鳥が登場したりで変化が激しい中、ベースで流れている7番のリズムがこれまた耳に残ったり。
3楽章-4楽章はアタッカで入るのもベートーヴェン的。
4楽章はだんだん激しくなり、終わりそうで終わらないコーダ部分もベートーヴェンっぽいです。
いろんなメロディが矢継ぎ早に出てくる、これは何とも楽しい楽曲(笑)。
ルチアーノ・ベリオの「シンフォニア」の3楽章的な面白さ、と言った感じでしょうか。
ベリオが散発的に引用が登場するのに対し、こちらは連続して主題が次々登場するので、休む暇がありません。
全体をちゃんと解析しながら聴いてみたい気もします。


大胆な現代的アレンジのシュネーベルと西村朗に対し、2曲めと4曲めは原曲を尊重した編曲になっていました。

2曲めの大フーガop.133(弦楽合奏版)は、行進曲風の主題と美しい緩徐楽章風主題が繰り返される楽しい楽曲。
バロック的フーガのロマン派的解釈。
今回の並びで聴くと、この楽曲も何やら現代音楽的に聴こえてきます。
生演奏で聴くことにより、改めて後期ベートーヴェンの楽しさを堪能できました。

一方でピアノ協奏曲5番(室内管弦楽版)の方は、この並びで聴いても実に普通のロマン派の曲、ゆったりと鑑賞しました。
ピアノ独奏は若林顕さん。
この曲も過去にカツァリス演奏のピアノ独奏版だとか、変わったものを聴いてきましたので(笑)、室内管弦楽編曲という点はあまり気にならず、普通に楽曲を堪能しました。
楽しく聴いておしまい。


ということで、今回も一風変わった珍しいプログラムを味わうことができました。

次回の定期演奏会は7月、協奏曲中心のプログラムのようです。
PACの夏のオペラ帯公演(今年は「フィガロの結婚」なので鑑賞したい)と時期が重なっていますので、予定を考えておかないと、などと思っているところです。