ブルックナーの5番 (大ブルックナー展 第5回) | れぽれろのブログ

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1月21日の寒い土曜日、「大ブルックナー展 第5回」と題された演奏会を鑑賞しに、西宮の兵庫県立芸術文化センターに行ってきました。
演目はブルックナーの交響曲5番です。
指揮は井上道義さん、オケは大阪フィルハーモニー交響楽団。
自分は1年少し前に、「大ブルックナー展 大3回」で交響曲4番を鑑賞しましたが、今回はその続編。


前半は井上道義さんご自身で作曲された「鏡の眼」という曲が演奏されました。
16分ほどの短い音楽で、井上さんが50歳のときの作品、50歳にして初めて作曲に挑戦した曲なのだとか。
解説によるとご自身の若いころのイメージを音にしたとのことで、激しさと憂鬱さが繰り返されるような、躁鬱入り混じる情緒不安定気味の(?)音でした。
井上さんは踊るような指揮姿が魅力的な指揮者ですが、感情が爆発するような部分ではやはりかなりオーバーアクションで指揮をされていました。
途中、エアーが漏れるような音が連続して続く部分がありましたが、あれは何の音なんだろう・・・?


後半はブルックナーの交響曲5番。
この曲はブルックナーの交響曲の中で最もかっこいい曲だと思います。
ブルックナーの交響曲といえば魅力的な緩徐楽章、とくに7番の2楽章、8番の3楽章、9番の3楽章は非常に心地よく素敵な音楽。
5番についても緩徐楽章(2楽章)は魅力的ですが、それにも増して5番はフィナーレがかっこいいです。
ベートーヴェンの5番に代表される「輝かしいフィナーレ」を持つ交響曲の中で、このブルックナーの5番は最も魅力的な曲だと感じます。
全体的に抒情性よりも金管の方向が印象に残る音楽。
「ブルックナーは苦手だが5番は好き」という人もいるくらいで、かっこいい交響曲が好きな方から人気のある楽曲です。

この曲に関しては、細部を繊細に表現する云々よりも、一体感をもってどどーんと前のめりに演奏するオケの方が、楽曲の魅力をより表現できるのかもしれません。
前回鑑賞した「大ブルックナー展 第3回」で井上さんは、兵庫県立芸術文化センターは会場の構造からブルックナーに合うという趣旨の発言をされていましたが、「金管の咆哮を聴け!」というタイプの楽曲である5番は、今回鑑賞して大フィル&芸文センターと相性の良い楽曲であるように感じました。


井上さんはなぜか服装を変えて登場。
井上さん&大フィルは全体的にしっかりと、走りすぎずにがっつりと演奏されていました。
この曲はテンポを前のめり気味で演奏し、少し走り気味でも面白い効果が得られますが、1楽章からしっかりと走りすぎずに演奏し、この点は正攻法の演奏。
ピチカート(ブルックナーの特徴)がしっかりと耳に残る演奏です。
2楽章の叙情的な第2主題はたっぷりと演奏したくなるところですが、ここは意外とあっさりで、感情過多にならない演奏を心がけているようです。

ブルックナーのスケルツォはどの曲も律儀な複合三部形式で、主題がしつこく4回登場して飽き気味になりがち。
しかし5番のスケルツォのメイン主題は、転調と曲調の変化とスピード変化が激しいので面白く、生演奏だと意外と飽きないことに気づきます。
なかなか中毒性のある主題です。

そして4楽章。
自分はこの導入部分、ベートーヴェンの交響曲9番、あるいはベルリオーズの「イタリアのハロルド」のような始まり方が意外と好きです。
ベートーヴェンの9番が前楽章の否定とその弁証法的発展、「イタリアのハロルド」が山賊による前楽章の殺害(笑)とそれに続く山賊の饗宴、と言った感じに聴こえるのに対し、ブルックナー5番の場合はクラリネットが前楽章をせせら笑っているように聴こえるのが、なんとなく好きなのです(笑)。
この日の演奏では、クラリネットの主題が弦楽器に受け継がれ行進曲風に発展していく部分もかっこよく、心地よく鑑賞。

この4楽章の聴きどころは展開部です。
ブルックナー恒例の激しい「反動的第3主題」を経て展開部。
金管のコラールに始まり、この主題がフーガ風に展開し、どんどん盛り上がっていくところが素敵ですね。
この部分を生演奏で鑑賞すると感動的です。
再現部を経てラスト、最後も金管楽器でどどんと盛り上がり、かっこいい演奏でした。


ということで、ブルックナーの魅力を楽しめる演奏会でした。
次回の大ブルックナー展は5月、交響曲9番を演奏されるとのことですので、これも聴きに行こうと思っております。


余談。
本年は3月に京都市交響楽団がマーラーの8番を演奏するということで、これはぜひ聴かねばと思っていましたが、なんとチケットが一瞬で完売してしまい、購入することができませんでした。
演奏されることが稀な楽曲ですので仕方ないとはいえ、残念。
自分はマーラー8番聴きたさに、2012年には名古屋まで聴きに行ったことがあるくらい好きな曲。
8番はまた別の機会を期待するとともに、3月は代わりに何を聴こうか、現在考え中だったりします。