カツァリス&広瀬悦子 ピアノデュオリサイタル | れぽれろのブログ

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12月4日の日曜日、ピアニスト:シプリアン・カツァリスを追いかけて、名古屋の三井住友海上しらかわホールに行ってきました。
このホールは昨年の10月にもカツァの演奏会が行われたホールで、訪れるのは1年ぶりです。
昨年は夜の公演でしたが、今年はお昼です。
比較的暖かい12月の日曜日、新幹線で名古屋に向かい、地下鉄東西線伏見駅から、南へ歩いてしらかわホールへ向かいました。


予定より少し早く着いたので、開演前にホールの近辺をウロウロ。
しらかわホールの南には名古屋市科学館があります。
大きな球体が目立つ外観が特徴的な建物です。
この球体の上部は世界一の規模のプラネタリウムとなっているらしく、結構人がたくさん集まっています。


その南側には名古屋市美術館がありました。
愛知県美術館は過去2度訪れたことがありますが、この名古屋市美術館はまだ訪れたことがありません。
展示を確認してみると、なんとアルバレス・ブラボの特集展示が開催されています。
これはかなり貴重な展示です。
朝早くに出かけてこの展示もついでに鑑賞すればよかったかなと、少し後悔・・・。


演奏会場から少し離れて科学館・美術館があるという組み合わせは、大阪で言うと中之島のフェスティバルホール-大阪市立科学館-国立国際美術館のパターンにも似ています。
中核都市の文化施設の配置パターンは似てくるのかな、などと考えながら、しらかわホールへ向かいました。

 


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昨年のしらかわホールの演奏会はカツァリスの独奏で、西宮(兵庫県立芸術文化センター)が協奏曲というパターンでした。
今年は逆、西宮がカツァ独奏、そして名古屋が連弾というパターンです。
連弾の相手は広瀬悦子さんというピアニスト。


今回はプログラムがすごいです。
 ・バレエ「くるみ割り人形」(組曲版)/チャイコフスキー
 ・バレエ「火の鳥」(組曲版)/ストラヴィンスキー
 ・交響曲5番1楽章/ベートーヴェン
 ・交響曲7番2楽章/ベートーヴェン
 ・交響曲9番4楽章/ベートーヴェン


全曲オケからのピアノ編曲ものです。
「くるみ割り」と「火の鳥」はお2人の連弾。
ベト5は広瀬さんの独奏、ベト7はカツァの独奏、そしてベト9はまたしても連弾とのプログラムです。
カツァはベートーヴェンの交響曲のピアノ編曲版を1番から9番まで全曲録音しているピアニスト。
7番と9番は自分もCDを持っています。
さらに7番の2楽章は、以前に神戸新聞松方ホールでカツァの演奏で聴いたことがあります。
楽しみなのがロシアものの2曲、とくに「火の鳥」の音色をどのように表現するのか、非常に楽しみ。
19世紀前半の初期ロマン派(ベートーヴェン)、19世紀後半の後期ロマン派(チャイコフスキー)、20世紀初頭(ストラヴィンスキー)の3種の音楽を並べて鑑賞できるのは、なかなかない機会です。


全体的を通して。
独奏の演奏会と比較すると、カツァのフリーダム感はやや控えめで、連弾の場合は呼吸を合わせる必要性からか、割と真っ当に(?)演奏している感じでした。
2台のピアノが作り出す音楽は、旋律の受け渡し・楽曲の流れが心地よいとともに、お2人の微妙な演奏の差異をも楽しむことができました。


まずはリズムとメロディがやたらと楽しい「くるみ割り人形」を楽しく鑑賞。
とくに印象的なのは「金平糖の踊り」の音色、通常チェレスタで演奏される部分をカツァはハッとさせるような音色で演奏していました。
おお、これぞカツァの醍醐味。
「中国の踊り」もうっとりとする音を心地よく鑑賞。


続いては「火の鳥」です。
この連弾のピアノ編曲版は世界初演なのだとか。
1919年の組曲版をベースにピアノに編曲されているようです。
音の面白さで言うと、最初の「導入部」~「火の鳥のヴァリアシオン」の部分が特に面白く、なかなか味わうことのできない音作りをしていました。
冒頭、カツァは立ち上がってピアノの中に手を突っ込んでいます。
弦を直接触って音を出しているのでしょうか?不可思議な音がします。
度入部の低音のドロドロした音の部分、そして火の鳥が激しく踊り狂う様子が、ピアノで表現するのになかなかぴったりで、いい感じの編曲・演奏になっていました。


逆に「王女たちのロンド」のオーボエ-チェロ-ファゴットと続く部分の表現や、「子守歌」のファゴット独奏の部分は、オケの豊かな音色で聴きたくなります。
しかし、「王女たちのロンド」の後半の盛り上がりはかなり素敵。
そしていよいよ「カスチェイの踊り」、どうなることかとヒヤヒヤしながら(笑)聴いていましたが、これがすごいテンションで楽しい連弾でした。
広瀬さんが強音でかなりダイナミックに演奏されており、迫力の連弾で聴きごたえがありました。
「フィナーレ」もかっこよく、素晴らしい演奏でした。


後半はベートーヴェン。
交響曲5番の1楽章を演奏する広瀬さん、いきなり体重をかけた最高音で冒頭の4音を響かせる入り方からかっこよく、広瀬さんのダイナミックさは、この曲に向いているように思いました。
続いてはうって変わってカツァ独奏によるゆるやかな交響曲7番の2楽章、こういう変奏曲風の楽章はカツァの独壇場。
音を変化させながら旋律を繋いでいく演奏が素敵で、この1曲だけでも名古屋まで聴きに来た甲斐があったというものです。


最後は交響曲9番の4楽章。
独奏ピアノ編曲ではかなり無理があるような楽章(笑)、カツァは独奏でこの曲のを録音していますが、今回は連弾です。
2台のピアノによる旋律の受け渡しが心地よいです。
第1主題とファゴットの対旋律。
歌が入る部分の独唱部、木管、合唱と、2台のピアノが繋いでいく。
行進曲風から徐々に盛り上がって第1主題の大合唱に続く部分がやはり良いですね。
ラストの盛り上がりもかっこよく、素敵な演奏でした。


アンコールは「韃靼人の踊り」(ボロディン)と「剣の舞」(ハチャトゥリアン)、いずれも連弾によるピアノ編曲版です。
「剣の舞」がかっこいい音楽でした。
中間部の4拍子のリズムに3拍子のメロディが乗る複雑な部分、リズムを取ろうとするためか、カツァの体が動くのも楽しい。
最後はデクレッシェンドして、ピロン♪と鳴らしておしまい。


ということで、楽しい演奏会でした。
独奏の演奏会と比較するとカツァ独壇場という感じにはならず、恒例の即興演奏もありません(これが一番残念)でしたが、たまには連弾も良いものです。
とくに「火の鳥」が面白かったですね。

 


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会場ロビーには写真などが飾られていました。
昨年もカツァの古いレコードなどの展示がありましたが、こういう趣向がしらかわホールの特徴なのでしょうか?


昨年販売されていたスイーツも恒例なのか、今年も販売されていました。
先日の西国三十三所といい、昨今はどこへ行ってもスイーツがあります。
昨年はカツァお好みのマロンのお菓子だったように記憶していますが、今年はクリスマスっぽい緑のお芋のお菓子のようです。


会場を出ると雨が降りそうな天気、と思っていると案の定雨が降ってきました。
せっかく名古屋まで来ましたが、今回はとんぼ返りです。
他に寄ってみたいところもありましたが、またの機会に。


今年の演奏会はこれでおしまい。
来年もまたいろんな演奏会に出かけたいですね。