著名人の肖像 -土門拳- | れぽれろのブログ

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久しぶりに写真の記事を。

 

だいぶ以前ですが、アンリ・カルティエ=ブレッソンが撮影した
著名人の肖像写真を並べてみたことがありました。

[アンリ・カルティエ=ブレッソン その3]


カルティエ=ブレッソンはフランスの写真家で、
このときの肖像写真も海外の著名人のものばかりでした。
海外だけではなく、日本の著名人の肖像写真を並べてみるのも面白いかも。
ということで、いくつかの写真を並べてみようと思います。

 

土門拳は昭和期の日本を代表する写真家です。
仏像や寺院の写真がとくに有名だと思いますが、
その他にも下町のスナップ写真や筑豊炭田の写真など
様々な記録写真も残されています。
土門拳はポートレートも数多く残しており、
昭和期の著名人の肖像写真が写真集「風貌」として残されており、
これは現在でも入手可能です。
そんな土門拳の肖像写真の中から、

印象的なものをいくつか並べてみようと思います。

 


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・川端康成 1951

 

まずは文学者の写真から。
川端康成はノーベル文学賞を受賞した昭和期を代表する作家さん。
この写真は割と有名なのではないかと思います。
陰影のある画面と鋭いまなざしが印象的。

 


・高見順 1948

 

小説家で詩人でもある高見順。
昭和史の資料としても重要な「高見順日記」も有名ですね。
こちらは写真集「風貌」の表紙にもなっており、
顎に当てた手と表情の組み合わせが素敵で、好きな写真です。
いい顔ですねー。

 


・志賀直哉 1955

 

「暗夜行路」で有名な志賀直哉。
この写真も有名でしょうか。
志賀直哉は川端康成や高見順より一世代上の作家さんで、
撮影時72歳、表情も穏やかな感じ。

 


・永井荷風 1951

 

「墨東綺譚」(実際の「墨」はサンズイあり)が
とくに有名な永井荷風は、志賀直哉よりさらに年上の作家さん。
この年齢でも女の子を侍らしている写真(笑)というのが
なんとも荷風らしいですね。

 


・林芙美子 1949

 

女性作家林芙美子はたばこを持つ姿で登場。
これもいい表情で素敵な写真ですね。好きな作品です。
どうでもいいことですが、作家はやはり
「右手にペン、左手にたばこ」なのでしょうか?

 

カルティエ=ブレッソンの場合は肖像写真であっても
どちらかといえば構図重視の作品が多かったですが、
土門拳の場合は、対象に肉薄するような写真が多い気がします。
このあたりの写真家としてのスタンスの差が
作品に見て取れるのも面白いですね。

 


・小林秀雄 1951

 

続いては文芸批評家の小林秀雄。
「モオツアルト」など、クラシック音楽ファンの間で有名ですね。
この画像では写真がトリミングされており、
実際の写真は小林秀雄は画面の中心にいます。

 


・梅原龍三郎 1941

 

洋画家の梅原龍三郎。
自身の作品とセットで撮影。
この写真に関しては画面構成が印象的で、
絵画が作り出す画面上のリズムも素敵ですね。

 


・小林古径 1951

 

日本画家の小林古径の写真
古径を撮影した写真は複数枚あって
正面を向いている写真も好きなのですが、
画像がないのでこちらを。
なんとなく古径の佇まいと古径の描く作品の雰囲気も
マッチしている気がします。

 


・松永安左衛門 1966

 

大正・昭和期の実業家、松永安左衛門の一枚。
これは何ともいい表情の写真ですね。
松永安左衛門は1875年生まれですので、撮影時91歳。
波乱の人生が皺と表情に刻まれている、といった感じ。

 


・山口淑子 1952

 

最後は「蘇州夜曲」で有名な山口淑子(李香蘭)の一枚。
これは構図が素敵な写真で、ここにあげた写真の中では
個人的に一番好きかもしれません。
映画の撮影途中での一枚と思われ、
狭い段差の上にいい感じのポージングで立つ姿は、
さすがに女優だなという感じがしますね。

 

土門拳によるポートレートはこの他にも素敵な作品がたくさんあります。
ご興味のある方は図書館などで写真集を手に取られても
面白いかもしれません。

 

 

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☆おまけ

 

別の作家さんによる肖像写真を少しだけ。


・永井荷風 (木村伊兵衛)

 

こちらは土門拳と同じく昭和を代表する写真家、
木村伊兵衛の撮影した永井荷風です。
土門拳の作品とはいくぶん雰囲気が異なりますね。

 


・太宰治 (林忠彦)

 

林忠彦も昭和期の著名な写真家で、
肖像写真も多く残されています。
その中でこの1946年の太宰治の写真が最も有名だと思います。
バーで撮影された、くつろいだ雰囲気のいい写真ですね。