クリスチャン・ツィメルマン ピアノリサイタル | れぽれろのブログ

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11月21日の土曜日、西宮の兵庫県立芸術文化センターに行ってきました。
目的はクリスティアン・ツィメルマン(ツィマーマン)のピアノリサイタルです。
演奏会は夕方5時から。
引っ越してから西宮が近くなったので、
3時ごろから準備して3時半に出発しても余裕で間に合います。
なので、お昼過ぎから久しぶりに少し昼寝をしてからでかけました。
寝るだけやったら時間短縮の意味ないやないか、と言われそうですが・・・笑。

ツィメルマン(ツィマーマン)は好きなピアニストで、
自分は過去4度演奏会を鑑賞しています。
しかし、過去の記録を確認してみると最後に生演奏を聴いたのは2010年、
今回は5年ぶり、久しぶりの鑑賞となります。
実は2年前の2013年にもベートーヴェンの後期三大ソナタ(30~32番)という
プログラムで来日されており、このときもチケットを買ったのですが、
急遽公演の日程が変更になり、結局行けなかったのでした。
久しぶりなの生演奏なので楽しみ。

ツィメルマンは構築性にこだわった演奏をされる方で、
部分部分の音の強弱・テンポの速度変化・ペダルコントロールなどの設計性を
大切にする演奏という印象が強いです。
休止(無音の時間)を大事にするのも特徴的。
その結果すごく心地よい響きになるのですが、このあたりは
完成度が高いという反面、曲が流れないと感じる方もおられるようです。
確かに全体をさらりと聞き流すには向かない演奏と言えるかもしれませんが、
楽曲の細部の音を聴くという心地よさがそれを上回っています。
なんにせよこのような演奏スタイルから、すごく巨匠感が漂ってくる演奏家です。
ふんぞり返って聞くことが許されないような、
正座して聴かんとあかんような(笑)、そんな印象も持ったりします。

この日はシューベルトのプログラムでした。
チケットを買ったときはまだ曲目が確定しておらず
(これもツィメルマンにはよくあるパターン)チケット購入当時は
「ブラームスの美しき小品からシューベルト最晩年のピアノソナタまで、
ロマン派プログラムを予定」とだけ書いてありました。
それでもどうせ外れないので、気にせずチケットを購入。
結果的に今回はオールシューベルトのプログラムでした。

とうことで、以下この日の演奏の覚え書きです。


計3曲が演奏されました。

前半1曲目は「7つの変奏曲ト長調」という曲。
全然知らない曲です。
ウィキペディアによると「1810年 偽作?」となっています。
シューベルト13歳の時の作品とされている曲のようです。
その名のとおり、7つの変奏で出来ている曲でした。
主題はすごくシンプルで、誰でも作曲できそうなメロディ。
変奏が繰り返されるたびにどんどん装飾が付いていき複雑になっていきます。
右手が装飾音のみの部分でも左手に主題が出てきたりしますが、
ツィメルマンは左手がよく聴こえるように演奏。
最後から2番目の短調の変奏はかなりドラマティックに演奏されていました。

前半2曲目からが本番、いよいよシューベルトのピアノソナタ20番です。
ツィメルマンは1曲目から2曲目にそのまま入りたそうな感じにも見えましたが、
拍手が起こりました。
どこかのピアニスト(→)なら拍手を制止して無理やり弾き続ける
ところですが(笑)、ツィメルマンはちゃんと立ち上がって拍手を受けています。

シューベルトは歌曲王などと言われるだけあって、
歌謡的なメロディが印象に残る作曲家。
ソナタ20番は、1楽章の第2主題のメロディ、
そして4楽章のロンド主題のメロディが歌謡的で好きです。
加えて、2楽章中間部のドラマティックさが素晴らしい作品。
ツィメルマンは出だしをかっこよく引いた後、
1楽章第1主題は流れるように弾いていきますが、
第2主題でぐっとテンポを落として歌う、いい感じですねー。
2楽章の中間部、ものすごく強い打鍵で激情的に演奏されています。
ツィメルマンはあまり体を動かさない演奏家ですが、
この部分は弾きぶりもダイナミックです。
4楽章のロンド主題の歌はさらりと弾いて心地よい、
しかし展開はダイナミックです。
ツィメルマンは無音の時間を大切にする演奏家。
3楽章の後半や4楽章の最後の部分など、音の断片が続く部分で
無音の時間が生じ、時が止まります。
このあたり、無音もまた音楽なのだという印象を受けます。

前半、変奏曲とソナタ20番を並べて聴くことにより、
改めてシューベルトは歌とその展開の作家であることがよくわかります。
ツィメルマンの演奏を聴くと歌謡的なメロディが展開していく様子が説得的で、
やっぱシューベルトの20番ええわー、と思ってしまいます。

休憩を挟んで後半、いよいよシューベルト最後のソナタ、21番の演奏。
21番は20番に比べて歌謡的な要素が少なくなり、
より静謐な感じが強い楽曲。
1楽章の第1主題部からツィメルマンはじっくりと休止を大事にしながら、
左手のトリル部分の不穏感も醸し出しながら、演奏されています。
この楽曲、静謐さを重視するためにしっとり・ゆっくり演奏する演奏家が
多いように思いますが、ツィメルマンは部分によってはあっさりと流れるように
弾いています。
どちらかというと歌謡的な部分は歌を重視して軽めに演奏している印象。
4楽章は出だしから何度も繰り返されるユニゾン(ソの音)をかなり強調、
ドラマティックな展開を大事に演奏されていました。
こうやって聴くと21番も穏やかさだけではなくドラマティックさも
ある曲だということがよく分かります。


ということでいい演奏でした。
ツィメルマンはやっぱり素敵です。
いつもの如くアンコールはなし(ずいぶん昔はアンコールもあったのですが)、
このプログラムの後にアンコールは要らないですね。
最後は聴衆に向かって投げキッス、
そして終了。

ここ最近ピアノ中心の演奏会を連続して聴きました。
今年のピアノ鑑賞はこれにて終了。
最近は小編成のオケやオペラやピアノを聴くことが多かったですが、
次回は久しぶりにがっちりと分厚いオケを聴きに行く予定です。