懐かしい「みんなのうた」 (ゼロ年代編) | れぽれろのブログ

れぽれろのブログ

美術、音楽、本、日常のことなどを思いつくままに・・・。

昔懐かしい「みんなのうた」を思い出してみよう企画。
前回( →  )は80年代に放送されていた(90年代前半に再放送されていた)
作品の中から8つほど並べてみました。
今回はゼロ年代(2000~2009年)に放送されていた作品について纏めてみます。

自分にとってのゼロ年代は大学生を卒業し社会人になった最初の10年間に
あたるので、もう立派な大人(笑)だったのですが、お休みの日などはときどき
「みんなのうた」を見ていました。
「みんなのうた」は文字通り「みんな」の歌で、決して子供向けの歌ではなく、
大人が見ても意外と面白いものです。
ということで、ゼロ年代の曲の中から思い出深いもの、面白いもの、
よくできているなと思うものなどを、8曲並べてみることにします。
自分はゼロ年代後半にはテレビを見ることが少なくなるので、
作品はゼロ年代前半に集中しています。

前回の記事と同様、各タイトルの下にNHK公式ページのリンクを貼っておきます。
また、一部本日時点で動画が見られるものもはそのリンクも貼っておきますので、
ご興味のある方はご覧になってみてください。
(リンク切れはご容赦ください。)


---

◎りんごのうた
  → [NHKリンク]

まずはやはりというか(?)、当ブログではお馴染みの
椎名林檎さん作詞・作曲・歌唱の作品から。
林檎ファンの自分は当時「みんなのうた」に彼女の楽曲が出るということで
すごく楽しみにしていたことを覚えています。
花を咲かせ、実がなり、収穫され、出荷され、食卓に運ばれるりんごの気持ち。
並木路子の「リンゴの唄」は、人がりんごに感情移入する歌ですが、
こちらの「りんごのうた」は、りんごの気持ちそのものを歌っており、
この歌詞が歌手名の「林檎」と重なる、という構図になっています。

自分の記憶によると、この歌が発表された当時林檎さんは
「こどもでも歌えるように、1オクターブ内に収まる分かりやすい歌にした」
のようなことをインタビューで答えていた記憶があります。
しかし、Aメロからいきなり半音階進行で、最後は上主音で終わるメロディの
どこが歌いやすいねんと突っ込みたくなったことを覚えています(笑)。

人形がちょこちょこ動くアニメーションも印象的。
この林檎人形の微妙な笑顔と泣き顔が印象深いです。
この作品に関しては、上記NHKのサイトで一部のみ視聴できるようです。


◎フルサト
  → [NHKリンク]
  → [動画]

自分の記憶に間違いがなければ、上記の「りんごのうた」とセットで
放送されていた作品です。
秋の日の日本のふるさとを歌った歌。
作詞・作曲・歌唱は元レベッカのNOKKOさん。
彼女の本来の声域をはるかに超える(と思われる)ハイトーンで歌われており、
これが耳に心地よいです。
サビの「吹け吹け風よ どんどん吹け」の半音階のメロディが、
やたらと耳に残る音楽でもあります。

この作品のもうひとつの魅力は、何と言っても谷内六郎のイラストです。
昔の週刊新潮の表紙で有名な方。
素朴な田舎の村の風景に、少し幻想的な要素を組み合わせた
不思議な画面が魅力的。
そういえば昔の週刊新潮のCMで流れてる曲が童謡「村祭」だったように
記憶しているので、この「フルサト」のイメージともリンクします。
この当時谷内さんはもう亡くなられており、彼のイラストから抜粋し、
一部CGで動画化しながら再構成し、蘇らせた作品になっています。


◎テトペッテンソン
  → [NHKリンク]

この作品は衝撃的でした。
全く意味のないカタカナを羅列した歌詞だけで歌われるというナンセンスソングで、
それに様々な大きさ・色の直方体が動くというアニメーションが映し出され、
よく分からない不思議な魅力に充ちた作品になっています。
歌い手は井上順さん、歌詞は佐藤雅彦さんとのこと。

この曲を初めて聴いたときに自分がパッと思い出したのは、
タモリの「ソバヤ」やダウタウンの「オジャパメン」といったナンセンスソング。
タモリのはアフリカの部族音楽をそれらしく再現させたもの、ダウンタウンのは
韓国のアイドルグループの楽曲を聴こえるままに日本語のオノマトペ風に
移し替えたものを
何の解説もなく歌うことによりナンセンスソングとして
聴こえるというもので、
両者は実験的な要素が強いですが、
この「テトペッテンソン」の場合は純粋にナンセンスな歌詞のようですので、
ナンセンスソングとしての純度はより高いです。
楽曲はフランスの子供向け音楽から取られているようです。

緑のバックに赤・青・黄色・白などの様々なカラーリングの直方体が
移動・回転する画面。
最初はスネアドラムだけですが、音楽が進むにつれ、
次々と楽器が追加されていく構成。
転調して児童合唱が入る部分では、アニメーションの直方体も子供風の
小型直方体の集団となり、そして曲の最後にはすべての直方体と
すべての楽器が全員集合するという構成になっています。
遊び心満載の楽しい作品でした。


◎そっくりハウス
  → [NHKリンク]

これも自分の記憶に間違いなければ、「テトペッテンソン」とカップリングで
放送されていた作品です。
「みんなのうた」にはときどき暗い雰囲気のアニメーションが登場し、
子ども心に不思議な感覚を残すという系譜があるように思います。
有名な「メトロポリタン美術館」だとか「まっくら森の歌」などの系譜に
この作品も位置付けて良いのではないかと思います。
要するに、子供が見るとこのアニメーションは
怖いのではないかということです(笑)。

作詞・作曲・歌唱は谷山浩子さん。
楽曲自体は子供向けの歌いやすいメロディで、単に歌詞だけ聞くと、
家の中にまた家があってその中にまた家があって・・・という
ちょっと不思議な世界というくらいのイメージですが、
このアニメーションのために、何やら無限ループ的な怖いものになっています。
鏡と鏡を並べると鏡の無限ループになるというあの恐怖感に近い感じで、
とくにミニチュアの家の中に自分自身のミニチュアがいるというのは
何だが胃のあたりが下がるような心地悪さがあります。
最後に月が眼球に変化するところは、どきっとした記憶があります。


◎青い童話
  → [NHKリンク]

怖い系?といえばこの作品も印象的です。
この作品の魅力は、何といっても酒井駒子さんののイラストです。
酒井さんの独特の暗いトーンのイラストが、
お子様たちにある種の恐怖感を与えたのではないかと推測します。

作詞・作曲・歌唱は元ポケットビスケッツの千秋さん。
彼女の歌唱は少し癖がありますが、なかなかに魅力的です。
孤独な女の子の歌う歌が森のコミュニティのつながりを復活させる、
といった詞の世界が、短調から長調に移行するメロディとともに、
感動的な印象を与える楽曲に仕上がっています。


◎ヒナのうた
  → [NHKリンク]
  → [動画]

お子様のための分かりやすい音楽ということからすると、
すごく完成度が高い作品だと思います。
作詞・作曲・歌唱は柴草玲さん。
メロディはスピーディーですが歌いやすく楽しいものになっています。
カモのヒナが生まれ育って、大人になるまでを可愛らしく歌った歌ですが、
実は全ヒナの20%程度しか成長できず、残りの8割は死んでいるということが
示唆されるのも印象深いです。

この作品の魅力は、なんといってもアニメーションです。
カモのヒナがくるくる回る動きの愛らしさ。
ヒナの髪型から、死んだと思ったキャラクタが実は生きていて
最後は親になっていることが分かるという演出がまた良いですね。

アニメーターは南家こうじさん。
この方はたくさんみんなのうたを手掛けているようで、
前回(80年代編)の記事にもお名前が登場した方。
作品を鑑賞していた当時はお名前を存じ上げておりませんでしたが、
自分にとって思い出深い作品の多くについてこの方がアニメーションを
手がけておられ、今回お名前を覚えることになりました。


◎月
  → [NHKリンク]

記憶によると、宇多田ヒカルさんの「ぼくはくま」のカップリングで
放送されていた作品です。
「ぼくはくま」も魅力的な作品ですが、自分はなぜかこちらの作品の方が
印象に残っています。
歌唱はタレントのYOUさん。
作詞作曲は構成作家の倉本美津留さん。

歌詞はミニマル繰り返し系。
新しい朝、朝らしい朝、新しい朝、朝らしい朝・・・、
次の月、その次の月、次々と月、その次の月・・・、
これの延々の繰り返しが耳に残る、脳みそ浸食系音楽です。
様々な街や自然の中で、目まぐるしく太陽が昇り月が昇る、
タナカカツキさんのアニメーションも印象的。
男の子と女の子が手のひらサイズの太陽と月を手にするシーンも良いですね。


◎二人ぼっち時間
  → [NHKリンク]

最後は再び椎名林檎さんで〆させていただきます。
この曲は林檎さんのアルバム「三文ゴシップ」にも収録されており、
アルバムの中での位置づけとしては、後半1曲目の「ことば遊びソング枠」
(と自分が勝手に読んでいる枠)
に相当する楽曲。
編曲は斎藤ネコさん。

タイトルのとおり二人の時間を歌った音楽で、
1番は二人での食事、2番は二人の就寝前の・・・を表しています。
歌詞中の「ラ」「ファ」「ド」の部分が、それぞれメロディの音階に相当している
という遊び心も楽しい。
「ラはソファミのラ」のような意味不明な(笑)歌詞も登場し、
ラファソファミレラ♪と歌われています。

映像の方は人形劇になっていて、猫ちゃんの人形が実写の人間と共演するという
形になっており、詞の中の二人は、猫と人間という解釈になっています。
登場する人間の何やら怪しい仮面(笑)も印象的です。


---

ということで思い出深いものを並べてみました。
また機会があればもっと古い作品、自分が生まれる前の70年代の
作品などについても、何か書いてみようかなと思います。