二人の人物が画面上で向き合う・・・。
そんな美術作品を集めてみました。
向かい合う二人の目的も状況もそれぞれに異なる作品ですが、
二人が向かい合うってなんとなく構図的に面白い作品が多い気がします。
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・カード遊びをする人々/セザンヌ
まずはポスト印象派の画家セザンヌの有名作品から。
テーブルの前で二人の人物が向かい合ってカード遊びに興じています。
セザンヌはこのカード遊びのシリーズを何枚も製作しており、
初めのころの作品では画面上に複数の人物が登場していましたが、
やがて粗雑物が削ぎ落とされ、人物も二人になり、
上記のような作品として結実します。
上記のような作品として結実します。
セザンヌの興味はおそらく画面構成にあり、人物の体のライン、腕と肘のライン、
机と瓶のライン、このあたりのややアンバランスな対称形、
全体の微妙な構成が楽しい作品になっています。
机と瓶のライン、このあたりのややアンバランスな対称形、
全体の微妙な構成が楽しい作品になっています。
・二人の道化師/カロ
続いては17世紀フランスの版画作家、ジャック・カロの作品。
カロは三十年戦争の悲惨さを描写した「戦争の惨禍」のシリーズが有名ですが、
それ以外にも道化師や喜劇役者などを描いた作品もたくさん残しています。
その中でとくに印象的なのが、道化師などの二人の人物が
独特のポージングで向かい合う作品たち。
独特のポージングで向かい合う作品たち。
人物たちの独特の立ち方と身体表現が気に入っています。
・棍棒での決闘/ゴヤ
セザンヌのカードゲームは平和な戦いでしたが、こちらは恐ろしい肉弾戦。
ゴヤの「黒い絵」の連作の中から、向かい合って殴り合う二人が
登場する作品です。
登場する作品です。
泥の中に膝までどっぷりと浸かった状態、下半身が動けない状態で
棍棒で殴り合う・・・何とも恐ろしい状況です。
棍棒で殴り合う・・・何とも恐ろしい状況です。
ゴヤの「黒い絵」の連作はとくに「我が子を食うサトゥルヌス」が
有名だと思いますが、それ以外にも恐ろしい作品はたくさんあり、
これも相当に怖い作品だと思います。
有名だと思いますが、それ以外にも恐ろしい作品はたくさんあり、
これも相当に怖い作品だと思います。
人物二人を画面左側に配置し、2本の棍棒が形作る一直線のラインが
画面構成を印象的なものにしています。
・受胎告知/エル・グレコ
マリア様と天使ガブリエルが向かい合う「受胎告知」は多くの画家が描いている
テーマですが、16世紀スペインのマニエリスム画家、エル・グレコの作品が
自分は最も気に入っています。
テーマですが、16世紀スペインのマニエリスム画家、エル・グレコの作品が
自分は最も気に入っています。
マリア様に処女懐胎を告げに来る天使ガブリエル。
右上→左下という画面構成で向かい合う二人。
数ある「受胎告知」の中でこの作品が最も構図的にダイナミックで
ドラマティックな作品だと思います。
大原美術館に所蔵されている作品で、自分も3年前にこの作品を鑑賞しました。
大原美術館に所蔵されている作品で、自分も3年前にこの作品を鑑賞しました。
・近藤勇と鞍馬天狗/土門拳
写真作品からもチョイスしてみます。
二人が対峙する決闘の作品といえばこれ。
といってもこれは子どもたちの決闘ごっこ。
昭和中期の東京下町の様子を撮影した土門拳の写真です。
どちらが近藤勇でどちらが天狗なのでしょうか・・・?
躍動する子供二人の素晴らしい構図を瞬間的に捉えた写真で、
奇跡の一枚ともいえる作品です。
土門拳の下町のこどもたちのシリーズはこれ以外にも良い作品がたくさんあり、
個人的にすごく気に入っています。
・ワシントンD.C. アメリカ 1957年/カルティエ=ブレッソン
写真といえばやはりアンリ・カルティエ=ブレッソンを忘れてはいけません。
画面上の二人は別に向かい合って対峙しているわけではないですが、
二人の人物が絶妙なバランスで配置されるというテーマにおいては
やはりこの写真を挙げておきたくなります。
カルティエ=ブレッソンはこのような偶然にしてはできすぎている(?)といった
作品をたくさん残されています。
・龍虎図/狩野山楽
向かい合う二人・・・ならぬ二匹、
龍と虎が向かい合っている狩野山楽の作品です。
龍に向かって牙をむく虎と、虎に向かって睨みを利かす龍。
龍虎相搏つ。
右上の龍と左下の虎という右上→左下の構図が良いですね。
2年前の京都国立博物館の狩野山楽・山雪の特集で展示されていた作品です。
ちなみに虎の左にいるのは体の模様からすると豹のように見えますが、
当時は豹は牝の虎だと考えられていたのだとかで、
これはカップルの虎を表しているのだそうです。
・聚光院方丈障壁画 花鳥図/狩野永徳
ダイナミックな木の描写も良いですが、
木の上や水の上に佇む小さな鳥たちの描写も印象的な作品です。
で、何と何が向かい合っているのかというと・・・。
右上の鳥が手を振ると・・・。
左下の鳥が振り向く・・・。
というように見える作品。
ぼんやり見ていると気づかない、何とも可愛らしい描写です。
エル・グレコや狩野山楽と同じく、右上→左下の関係性。
これも京都国立美術館で9年前(もうそんな昔になるのか・・・)に鑑賞した
作品なのですが、この2匹の鳥に気づいたときは何やら嬉しかったです。
これも京都国立美術館で9年前(もうそんな昔になるのか・・・)に鑑賞した
作品なのですが、この2匹の鳥に気づいたときは何やら嬉しかったです。
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ということで、向かい合う二人(二匹)の作品を並べてみました。